マウスピース型矯正装置は透明なマウスピースを歯に装着し、マウスピースを交換しながら歯並びを整える装置です。マウスピース型矯正装置にはいくつか種類がありますが、その代表は「インビザライン」で、日本だけでなく海外でも多く取り入れられています。インビザラインを作製するための型取りを行う際、「iTero 」という口腔内スキャナー を使用します。今回はこの口腔内スキャナーの役割についてご紹介しましょう。
従来は印象材を使った型取りを行います
矯正装置を作るためには、まずお口の中の型取りが必要です。型取りの際には、粘土のような印象材をトレーに盛り、患者さんのお口の中に入れて歯型を取ります。印象材を使った型取りはワイヤー矯正装置、インビザライン以外のマウスピース型矯正装置、お子さんの固定式の矯正装置などで行います。この型取りが苦手という声がとても多く、嘔吐反射が強い人(吐き気を感じやすい人)は辛さを必死に耐えながら、印象材が固まるのをじっと待っていなければいけません。装置を作り変えるごとに型取りを行うこともあるため、患者さんにとって苦痛の時間であると言えるでしょう。
しかし、この辛さを払しょくするシステムが、インビザライン矯正における「iTero 」という口腔内スキャナーです。iTeroを使うことで従来の型取りの苦痛を少なくして型取りが行えます。
iTeroを使うメリットとは?
まずiTeroのメリットを挙げてみましょう。
・より正確な歯型が取れる
・嘔吐反射が出にくく、辛い思いをしなくて済む
・治療開始が早い
マウスピース型矯正装置は、精密な歯型を取ることが何よりも大切です。インビザラインは、アライナーと呼ばれるマウスピースを交換しながら歯並びを整えていきますが、アライナー作製に印象材を使わず、iTeroを使ってお口の中の型取りを行います。ここで採取した歯型のデータをもとに、歯の動きと最終的な歯並びや噛み合わせをシミュレーションすることができます。これはインビザラインにしかない特徴で、iTeroを使うことにより、正確なデータを得ることができます。
また印象材を盛ったトレーをお口に入れることがないので、気持ち悪くなりにくく、辛い思いをせずに歯型を取ることができます。トレーの場合、もし歯型がうまく取れなかった場合、再度歯型を取らなければいけません。嘔吐反射が強い人にとっては非常に苦痛な時間を味わうことになりますが、iTeroは口腔内スキャナーのため気持ち悪さをほとんど感じないまま歯型採取を終えることができます。
そしてiTeroで採取したデータはすぐにアメリカのアライン社に送られ、治療計画が作られます。そのため通常の歯型取りを行った場合よりも治療を早く始めることができるのも、iTeroを使う大きなメリットだと言えます。
「iTero element」と「iTero element2」の違いとは?
口腔内スキャナーiTero elementに続き、iTero element2を導入している歯科医院も増えています。初代のものよりも画面が大きくなり、口腔内の様子がよりはっきりとわかりやすくなっています。また読み込みもスピーディーになり、患者さんの負担もより軽くなっています。
当院ではiTero element2をインビザラインや自費の補綴治療(詰めもの・被せものの作製)などに使用しています。
このように、口腔内スキャナーを活用することで、不快感なく、より精密なデータを得ることができ、治療の質を向上させることができます。