矯正治療で抜歯する?しない?

矯正治療で抜歯する?しない?

矯正治療が必要と判断された場合に思い浮かぶのは「抜歯をしなければいけない」ではないでしょうか。矯正治療の多くは抜歯を必要としますが、全てのケースにおいて抜歯が必要なのでしょうか。今回は、矯正治療における抜歯の有無について考えてみたいと思います。

歯を残すことは、体の健康を維持することに深く繋がる

「8020運動」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、80歳になったときに自分の歯を20本残残しましょう、という厚労省と日本歯科医師会が推進している運動です。80歳で20本の歯があれば、しっかり噛んで食事を楽しむことができるため、健康長寿にも深く関わっていると言えます。

しかし矯正治療では、健康な歯を抜歯しなければいけないケースが多く、健康な歯を抜くことで将来的に残存歯に影響してしまう可能性は否定できません。できるだけ健康な歯を残すことで体の健康を維持することが推進されているのにもかかわらず、矯正治療では健康な歯を抜歯しなければならないことがあるのはある意味矛盾していると考えられるかもしれません。

矯正治療で抜歯が必要となるケースとは?

では矯正治療で抜歯が必要となるのは、どのようなケースでしょうか。

・歯の大きさに対して顎の骨が小さいケース・・・顎の骨が小さい場合、永久歯の歯列が正しい場所に並ばずに飛び出してしまう、重なり合ってしまうなどガタガタの歯並びになってしまいます。このようなケースの多くは小臼歯を抜歯して矯正治療を行います。

・前歯が前に出ているケース・・・前歯が前に出ている、前歯が前に傾斜している、横顔を見たときに口元が前に出ている、前歯が出ていて口が閉じにくいなどの場合にも、小臼歯を抜歯して矯正治療を行うことがあります。

・親知らずがあるケース・・・親知らずは必ず抜かなければいけないことはありません。親知らずが上下4本とも生えていても噛み合わせに問題がなく歯列が整っていれば、そのままにしておくことがほとんどです。しかし親知らずがあることで歯列の乱れや噛み合わせに異常がある場合、親知らずを抜歯します。

・その他の異常があるケース・・・過剰歯(通常より歯の本数が多い)、埋伏歯(歯が骨に埋まっている)で萌出させることが困難な場合、大きい虫歯・歯根の露出・歯根の吸収があるなど歯の保存が難しい場合では抜歯となることがあります。

抜歯をせずに矯正治療ができるケースとは?

軽度のガタガタやもともと歯並びに隙間がある場合、矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療など、症例によっては非抜歯で歯並びを改善することができるケースも少なくありません。非抜歯で矯正治療を進めるにあたり、歯を少し削って歯が動くスペースを確保したり、上下の歯の大きさのバランスを整えたりする場合もあります。

歯列矯正によって歯並びを整えることは、虫歯や歯周病を予防し、歯の健康を維持することに繋がります。しかし矯正治療のために抜歯することで、将来的な歯の寿命に影響してしまうことも考えられます。一方で、明らかに抜歯の必要があるケースで抜歯せずに無理に矯正治療を行ってしまうと、上下の歯が上手くかみ合わなくなったり、口が閉じにくくなったり、歯や歯の周囲の組織にダメージを与えたりする場合もあります。

抜歯か非抜歯か、どちらの方法で矯正治療を進めていくのか、またその際に生じるリスクなどもよく理解するために、担当の歯科医師とよく相談しましょう。

ページトップへ