萌出遅延、埋伏歯(生え変わりの異常)

萌出遅延、埋伏歯(生え変わりの異常)

乳歯が抜けてもなかなか永久歯が生えてこない場合、顎の骨や歯に何らかの原因があることが考えられます。生え変わりには個人差があり、その幅は広いですが、平均的な歯の生え変わりの時期よりも大幅に歯が生えるのが遅れることを「萌出遅延(ほうしゅつちえん)」、歯ぐきの中に永久歯が埋まったまま生えてこない状態の歯を「埋伏歯(まいふくし)」と言い、生え変わりの異常と診断されます。今回は、萌出遅延と埋伏歯についてお話をいたします。

萌出遅延と埋伏歯について

萌出遅延は、主に上顎の前歯に起こりやすく、特に中切歯(1番目の歯)と犬歯(3番目の歯)によく見られます。これらはとても目立つ場所なので、なかなか歯が生えてこないと心配になることと思います。また学校の歯科検診で指摘され、心配になって歯科医院を受診する場合も多いでしょう。

生え変わりのスピードには個人差があり、その差は2年ぐらいだと考えられています。そのため、生え変わりが遅れていると感じられてもただ単に個人差の範囲内である場合もあります。萌出遅延かどうかのひとつの目安はレントゲン撮影による画像診断です。レントゲン写真では、永久歯がきちんとあるかどうかを見極めるだけでなく、定期的に撮影し過去のレントゲン写真と比較することで、歯の位置や成長の状態を確認することができるため、萌出遅延かどうかを判断する重要な判断材料になります。また、左右の同じ名前の歯の生え変わり時期に半年~1年以上差があるかどうかも、萌出遅延を疑う目安となります。

埋伏歯は、顎の骨の中や歯ぐきの粘膜下に歯が存在しているのに、歯ぐきの外へ生えてこない状態を言います。埋伏歯で多いのは親知らずですが、その他に上顎の中切歯(1番目の歯)や犬歯(3番目の歯)などでも多くみられます。また、歯の半分だけが歯ぐきの外へ生えている「半埋伏(はんまいふく」という状態の歯も埋伏歯の一種です。

原因について

萌出遅延や埋伏歯の原因は様々で、歯だけでなく全身の健康状態によるものも考えられます。

・遺伝性歯牙形成不全、骨系統疾患、くる病など栄養障害などの全身疾患が原因の場合

・歯胚の位置や方向の異常、スペース不足、過剰歯の存在、癒合歯、乳歯の早期損失などが原因の場合

萌出遅延や埋伏歯を放置することによるリスクとは?

乳歯が抜けたけどなかなか永久歯が生えてこない、乳歯が全然抜ける気配がないなど、萌出遅延や埋伏歯が考えられるにもかかわらず、そのまま放置するとどのようなリスクがあるのでしょうか。

  • 歯並びを悪くする

乳歯が抜けたにもかかわらず、なかなか永久歯が生えてこない場合、隣の歯がだんだん傾斜してきたり、咬みあう相手になる歯が伸びてくるため、永久歯の生えてくるスペースが狭くなります。その結果歯並びが崩れてしまいます。

  • 埋まっている歯と顎の骨が癒着する可能性が高まる

長い間歯が顎の骨の中に埋まっている状態が続くと、埋まっている歯と骨が癒着してしまう(くっついてしまう)リスクが高まります。これを「骨性癒着(こつせいゆちゃく)」と言い、歯を引っ張り出すことが難しくなり、抜歯の対象となります。

  • 埋伏歯が他の歯や顎の骨に悪影響を与える

埋伏歯の歯冠が他の歯の歯根にぶつかるような位置にあるときに、歯根吸収を引き起こす場合があります。歯根吸収が進行すると、最悪の場合その歯は抜歯となることもあります。また、埋伏歯が「含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)」という嚢胞をつくる場合もあり、嚢胞が大きくなると周りの歯を押して歯の位置がおかしくなったり、嚢胞により顎の骨が大きく吸収されることもあります。

永久歯がなかなか生えてこない状態が続いたら、早めに歯科医院に相談しましょう

歯の生え変わりは個人差が大きいため、不安に感じることも多いと思います。ただ単に遅いだけなら心配いりませんが、萌出遅延や埋伏歯がある場合、歯並びや歯の健康に大きく影響してしまいます。お子さんの永久歯がなかなか生えない場合は、早めにかかりつけの歯科医院に相談してみて下さい。

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