矯正ブログ

妊娠中の矯正治療で気をつけること

妊娠中はホルモンバランスの変化により、体調が大きく変わります。妊娠中や産後は体調管理に気をつける時期であり、お薬を飲むことにも躊躇してしまうことと思います。また、妊娠中には歯が痛くなったり、歯ぐきが腫れたり、お口の中でも色々なトラブルが起きやすくなります。では矯正治療についてはどうでしょうか。今回は、妊娠中の矯正治療で気をつけることについてお話します。

妊娠すると、ホルモンバランスの変化で様々な変化が起こる

女性は妊娠すると、体内のホルモンバランスが大きく変わり、それに伴って様々な変化が起こります。その代表と言えるのが、つわりです。つわりは多くの妊娠中の女性が経験し、その辛さは言葉では言い表せないことでしょう。

そしてこの変化は、お口の中にも様々な影響を与えます。まずはつわりにより歯磨きがし辛く、お口の中の衛生状態が悪化してしまうことが挙げられます。汚れが残るとプラークが作られ、虫歯や歯周病になりやすくなります。

また、妊娠中は「妊娠性歯肉炎」が起こりやすくなります。ホルモンの変化により歯肉が腫れやすくなるため、歯肉炎が起こりやすくなります。歯肉炎をそのままにしておくと、歯周病に進行する恐れがあります。歯周病になると、早産や低体重児出産のリスクが高まるとも言われているため、注意が必要です。

妊娠中の矯正治療で気を付けなければいけないこととは?

基本的に、妊娠中でも矯正治療は可能です。しかし体の変化により、非妊娠時と比べて気を付けなければいけないことがあります。では妊娠中の矯正治療はどのような事に気を付けるべきでしょうか。

  • 虫歯・歯周病リスクに対する口腔ケア・・・ワイヤー矯正装置の場合、歯磨きがし辛いため妊娠中でなくても磨き残しが多くなりやすいです。つわりの時期と重なると、歯磨きの時間が苦痛で仕方なくなるため、虫歯・歯周病リスクがさらに高くなってしまうことが考えられます。できる限り、お口の中を清潔に保つように心がけましょう。つわりの時期が終わったら、念入りに歯磨きを行うようにして下さい。また安定期に入ったら、歯科医院で歯のクリーニングを受けておくと残っているプラークもすっきり取ることができます。

 

  • レントゲン撮影・・・矯正治療を始めるにあたり、レントゲン撮影が必要になります。また、矯正治療中や矯正治療終了時にもレントゲン撮影を行うことがあります。歯科でのレントゲン撮影時の被ばく量は微量ですが、特に妊娠初期はレントゲンによる被ばくが心配な方もいらっしゃると思います。もしかしたら妊娠しているかも?という場合は歯科医師に申し出てください。妊娠前に撮影した分に関しては、特に心配いりません。

 

  • 痛み止めや抗生物質の服用・・・妊娠中に薬を飲むと、薬によってはお腹の中の赤ちゃんに影響を及ぼすものがあります。矯正治療で歯が動く時、痛みを強く感じる場合は痛み止めを服用して対処することがありますが、妊娠中に使うことのできる痛み止めは限られています。また抜歯を行った際、化膿止めの抗生物質が処方されますが、抗生物質も赤ちゃんへの影響が心配されます。もちろん妊娠中の方にも比較的安全に使える薬はいくつかあります。妊娠中であることを歯科医師にきちんと伝えておきましょう。

 

金属アレルギーがあっても矯正治療は受けられる?

歯科治療を受けられる方の中には、金属アレルギーをお持ちの方もいらっしゃると思います。金属アレルギーでは、金属が皮膚に触れた部分に赤味や腫れ、かゆみ、痛みなどの症状が出ます。矯正装置にも金属が含まれていることがありますが、金属アレルギーをお持ちの方でも矯正治療を受けることは可能なのでしょうか。

歯科治療における金属アレルギーとは?

歯科治療において、金属素材を使用する機会は多くあります。虫歯治療で歯を削ったときに、削った部分を修復する際に使われるインレーと呼ばれる詰め物や、クラウンと呼ばれる被せ物などが代表的な例です。これらは一般的に銀歯と呼ばれ、保険適用の材料です。安価で治療ができるため日本でも昔から取り入れられています。しかし、歯科治療に使われる金属素材が、金属アレルギーを引き起こす可能性があるとの報告があり、近年ではセラミックなど非金属の素材を使った治療法に移行していっています。

歯科治療で金属アレルギーを引き起こすと言われている金属は、銀歯の主な素材である「金銀パラジウム合金」や、入れ歯の金属部分に使われる「ニッケル」「クロム合金」などがあります。このような金属がイオン化し、体内のたんぱく質と結びつくことで抗原となってアレルギー症状を引き起こすと考えられています。

矯正治療は大丈夫?

矯正治療の装置で最もオーソドックスなものは、ブラケットとワイヤーを使ったワイヤー矯正装置です。ほぼどのような症例でも対応できるため、矯正治療の第一選択肢とも言えます。しかしこの装置は金属のイメージが強いため矯正治療でも金属アレルギーが起こるのではないかと不安に思われる方も多いことでしょう。また実際に金属アレルギーをお持ちの方は、矯正治療を諦めなければならないのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、矯正治療に用いられる装置の中には、アレルギーを起こしにくい金属を用いたものや、金属以外のものも多くあります。

例えば、ワイヤー矯正装置でも、セラミックやプラスチック素材のブラケット、アレルギーの原因となりにくい金属素材のワイヤーなどを使用することで、金属アレルギーに対応することができます。

また、症例によっては透明なマウスピースを使ったマウスピース型矯正装置でも対応できます。矯正治療で使うマウスピースは、素材がウレタン樹脂でできており、金属は使われていません。

このように、金属アレルギーの方でも使用する装置をしっかり選択すれば矯正治療が可能な場合があります。金属アレルギーをお持ちの方や不安な方は、かかりつけ医に相談してみて下さい。

矯正治療中に装置が外れたらどうする?

固定式の矯正装置は、食事を行っても外れないように歯科用接着剤で接着してあります。しかし矯正装置は虫歯治療の詰め物や被せ物と違い、矯正治療後に取り外すことを前提に接着しているため、何らかの原因により矯正装置が外れてしまうことがあります。今回は、矯正装置が外れる原因と対処法などについて説明いたします。

どの矯正治療でも装置が外れる可能性はある

矯正治療にはいくつか種類があります。主な矯正治療法として、ブラケットとワイヤーを使ったマルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)、インビザラインに代表されるような取り外し式のマウスピース型矯正装置、歯科矯正用アンカースクリューなどがあります。

最も一般的なマルチブラケット矯正装置は歯の表面にブラケットを着けてワイヤーを通し、ワイヤーを調整しながら歯を動かします。この場合、歯の表面に着けたブラケットが外れてしまうことがあります。特に外れやすいケースは以下のようなものが考えられます。

・セラミックや銀歯などの被せ物に装置を着けた場合

・歯質を強化するためのフッ素塗布を行っている歯に装置を着けた場合

・固いものをブラケットの上で噛んでしまった場合

・ブラケットを装着する際の防湿不足(唾液が流れ込んで上手く接着できない)の場合

・噛み合わせが深いため下の歯の装置が上の歯に当たる場合

・歯ぎしりがひどい場合

またインビザライン(マウスピース型矯正装置)でも「アタッチメント」という米粒大の樹脂を歯の表面に接着しますが、それが取れてしまうことがあります。アライナー(マウスピース)を外すときに大きな力がかかった場合など、何らかの拍子でアタッチメントが取れてしまうことがあります。

歯科矯正用アンカースクリューは顎の骨に埋め込んで歯を動かすための支えとする小さなネジのような装置です。歯科矯正用アンカースクリューは最終的には取り外すものなので、顎の骨とくっつかないように取り付けます。そのためアンカースクリューがぐらぐらしてきて自然に取れてしまうことがあります。

矯正装置が外れないようにするために気をつけること

・噛み方に注意する・・・食事の際に、固いものを食べるときは少し小さめにして口に入れる、粘着性の強いものは控えるなど噛み方や食べ方、食べ物に注意して過ごしましょう。

・指や舌であまり触り過ぎない・・・矯正装置やアタッチメントなどが気になって、つい指や舌で装置を触ってしまいがちですが、矯正装置の不具合が生じたり取れやすくなってしまうため注意が必要です。

矯正装置が外れてそのままにしておくと予定していない方向に歯が動いてしまう可能性もあるため、装置の故障に気付いた場合は、次の受診日を待たず、できるだけ早く受診するようにして下さい。

矯正治療中に歯がグラグラするのは異常?

矯正治療を始めると、これまでには無かった症状が現れて不安になることもあるかもしれません。最も多いのが、前回お話しした歯が動くことで起きる歯の痛みですが、それ以外で心配になるのが、「歯がグラグラと動くこと(動揺)」ではないでしょうか。今回は、矯正治療中の歯のグラつきについてお話します。

矯正治療中はなぜ歯がグラグラする?

歯がグラグラと揺れ動くことを「動揺」と言います。矯正治療を受けている最中に歯に動揺が見られるのは決して珍しいことではありません。しかし矯正を始めて歯が動揺すると、「歯が抜け落ちるの!?」とすごく心配になることでしょう。ではなぜ矯正治療中に動揺が起きるのか、そのメカニズムをまずご説明します。

歯はそのまま歯ぐきにくっついているのではありません。歯の根の周りには「歯根膜」という薄い膜があり、その薄さはおよそ0.15~0.2mmと非常に薄いものです。歯根膜にはたくさんの細い線維が走っており、この線維に包まれて骨の中に歯が並んでいます。歯根膜があることで、指などで歯を押すと「生理的動揺」という歯がほんの少し動く現象が見られます。この生理的動揺は、健康な歯根膜でも見られます。

矯正治療はここに矯正装置による力を持続的に加えます。物理的な力が加わると歯根膜の中の骨を溶かす細胞である「破骨細胞」と、骨を作る「骨芽細胞」の働きにより歯の周囲の骨が作り変えられるため歯根膜が一時的に厚みを増します。矯正治療中はこの働きを繰り返しながら少しずつ歯が動くので、歯が少しグラつくことがありますが、決して異常というわけではありませんのでご安心下さい。

あまり強い力をかけるとトラブルの原因にも・・・

矯正治療は弱い力をかけながら歯の移動を行います。このため治療期間は長くなり、「もっと早く終わらないのかな」と思うようになる方もいるかもしれません。

しかし早く終えたいからといって、一般的な力のかけ方よりも強い力を加えると、歯ぐきに炎症が起きたり歯の根っこの吸収(歯根吸収)が起きたり、ひどいときには歯の神経が死んでしまう恐れがあります。また、強すぎる力では逆に歯が動きにくくなるという報告もあります。

したがって、矯正の力を強くし過ぎることは避けたほうが良いと言えます。

矯正治療中に起こる歯のグラつきが想定の範囲内であれば問題はありませんが、あまりにも痛みなどが強い場合は、担当医に相談することをお勧めします。

矯正治療中の痛み

ご自身やお子さんの歯並びが気になり、矯正治療をしてみたいけど、痛いのでは?と不安に感じ、矯正治療をためらう方もいらしゃると思います。矯正治療は、矯正装置を歯に付けて歯を少しずつ動かすため多少なりとも痛みを伴うのは致し方ありません。しかし歯が動くこと以外の原因でも痛みを感じてしまうこともあるようです。今回は、矯正治療中の痛みについてまとめてみました。

矯正治療中に起こる痛みの原因

お子さんの矯正でも成人の矯正でも、矯正治療は歯に矯正装置を付けて歯を動かします。お口の中に矯正装置があるとまず違和感や異物感はどうしても感じてしまいますが、それ以外に「痛み」を感じ、矯正治療が苦痛に感じてしまうこともあるかもしれません。では矯正治療に伴う痛みの主な原因を挙げてみましょう。

  • 歯が動く痛み・・・矯正治療で最も多い歯の痛みは、歯が動く時の痛みです。矯正治療は歯に矯正装置を装着して歯に力を加え、歯を少しずつ移動させます。ワイヤー矯正装置の場合はワイヤーを調整したあと、マウスピース型矯正装置は新しいマウスピースに交換したあとに痛みを感じやすくなります。また顎間ゴムをかけたときや、インビザラインでアタッチメントを付けたときに、痛みが強く出ることがあります。これらの痛みは歯に力をかけた時に歯の周囲が炎症のような状態となり、周囲の骨を作り変えていく時に生じるため、ある意味歯が動いている証拠とも言えます。

 

  • 歯を削ったときに感じる痛み・・・ガタガタした歯並びを治す際、歯を正しい位置に並べるために歯のスペースを作るために歯を削る「IPR(ストリッピング、ディスキング)」という処置が必要になることがあります。IPRでは歯の表面のエナメル質だけをごく薄く削りますが、削る量が多いと、知覚過敏のような痛みが起きることがあります。

 

  • 矯正装置が当たる痛み・・・矯正装置が歯ぐきなどの粘膜に当たることで痛みを感じることも多いようです。装置が当たると粘膜に傷がつき、口内炎などになってしまうことがあります。口内炎になると普段の食事まで影響が出る場合もあります。

痛みの改善方法

矯正治療中に起こる痛みに対し、それぞれの原因に応じた対処法で症状の緩和が期待できます。

  • 歯が動く痛みに対する対処法・・・歯が動く痛みはずっと続くわけではありません。2~3日が痛みのピークで一週間程度で治まってきますが、あまりにも辛い場合は痛み止めを飲んで対処して下さい。ただし、痛み止めを大量に服用すると、周囲の骨を作り変えるための炎症反応を過剰に抑えてしまい、歯の移動を妨げてしまう可能性もあります。

 

  • 歯を削ったときに感じる痛みの対処法・・・歯を削った際に起きた痛みは、歯科医院での治療が必要になります。また痛みの原因が歯を削ったためではない可能性もあるため、歯科医院を受診し、症状に応じた処置を受けるようにして下さい。

 

  • 装置が当たる痛みの対処法・・・装置自体を調整して当たりにくくすることができる場合もありますが、それが難しい場合には装置をカバーするワックスなどを使用することができます。装置をカバーすることで粘膜に当たる衝撃を和らげます。

矯正治療は痛みや違和感はどうしても出てしまいます。しかし、痛みの原因と対処法を知っておくと気持ちの上でゆとりを持つことができるでしょう。矯正治療中の痛みに不安やお悩みがある方は、遠慮せずに歯科医師に相談してください。

 

 

矯正治療中の口内炎

矯正治療中は痛みを感じることが多く、そのほとんどが歯の動く痛みです。しかしこれ以外にも、矯正装置が粘膜に当たることで口内炎ができてしまい、痛みを感じることがあります。今回は、矯正治療中にできる口内炎についてお話をいたします。

矯正装置によってできる口内炎とは

口内炎にはいくつか種類があります。代表的な口内炎は、ビタミン不足やストレスなどが原因で起きる「アフタ性口内炎」で、経験したことがある方も多いでしょう。

一方、矯正装置が粘膜に触れるために起きる口内炎は「外傷性口内炎」といい、これは物理的な問題により発症してしまう口内炎です。

この矯正治療中の口内炎は、主にワイヤー矯正などの固定式の装置で多く見られます。矯正装置を初めて付けたときに起こりやすく、歯の動く痛みに加えて口内炎の痛みにも悩まされると、矯正治療自体が憂鬱に感じてしまうかもしれません。

しかし矯正治療によって歯が動き、歯並びが改善されていくと装置が粘膜に当たらなくなり、口内炎の症状が緩和されていくことが多いようです。

口内炎の対処法

矯正装置が粘膜に当たるのを防ぐための矯正用ワックスが効果的です。ブラケットを包み込むようにしてワックスを付けるとよいでしょう。

矯正用ワックスを付けても装置が当たって口内炎ができてしまう場合は、粘膜に当たらないように矯正装置を調整してもらう方法もあります。その他ブラケットを金属ではない素材にすることで、粘膜への刺激を和らげる効果が期待できることもあります。

もし口内炎ができて痛い場合は、歯科医院で口内炎の症状を緩和させるための軟膏を処方してもらうことも可能です。また歯科用レーザーがある場合、レーザーを使うことで口内炎の痛みを取り除くこともあります。

口内炎の痛みに悩む方は、我慢せずに早めに受診し、対処してもらいましょう。

口内炎ができないようにするには?

矯正装置という物理的な原因により口内炎ができてしまうため、矯正装置がなるべく粘膜を刺激しないように調整する他、ご自身で少し気をつけていただくことで口内炎ができにくくなることがあります。

まずはお口の中を清潔にし、プラークを溜めないようにしましょう。お口の中は細菌がたくさん棲みついており、口内炎の悪化を招くことがあります。お口の中を常に清潔に保っておくことで口内炎が悪化しにくく治りやすい環境をつくることができます。

また栄養バランスの取れた食事を行うことも、口内炎を予防するためのポイントです。ビタミンBなどのビタミン群を十分に摂取するようにして下さい。

矯正治療中でも虫歯治療はできる?

矯正治療中は虫歯リスクが高いことはよく知られています。虫歯にならないよう、念入りな口腔ケアが必要ですが、もし虫歯になってしまったら、矯正治療中であっても治療はできるのでしょうか。

矯正治療中は口腔ケアが難しい

矯正治療中は矯正装置をずっと装着して過ごさなければいけません。ワイヤー矯正装置のような固定式装置の場合、デンタルフロスが通しにくいため歯と歯の間に汚れが残りやすくなり、虫歯菌が増殖しやすくなります。マウスピース型矯正装置は食事と歯磨きのときは取り外すことができますが、それでも一日20時間以上はマウスピースを付けておく必要があります。そのため歯や装置に汚れが残りやすくなってしまいます。

またマウスピース型矯正装置は装置を取り外して歯磨きができるため歯磨きはしやすいですが、マウスピースが装着されていると虫歯菌などの細菌を洗い流すための唾液循環を防いでしまいます。その結果、虫歯菌をマウスピースで閉じ込めてしまいやすくなります。ケアが不十分だと、虫歯の一歩手前の段階である「脱灰(歯の表面が溶けて白くなっている状態)」になりやすく、そのまま虫歯になってしまう恐れがあります。

歯が動くことで虫歯が見つかることも・・・!

また矯正治療前にはわからなかった虫歯の存在が、歯が動くことで見つかることがあります。特に歯と歯の間にできる虫歯は、痛みなどの自覚症状がない限り、自分では見つけにくいものです。ガタガタの歯並びを並べていくと、歯と歯の重なりが無くなり、それまで表からは見えなかった虫歯が見つかることがあります。

このように、残念ながら矯正治療中に虫歯ができてしまう、もしくは発見されることは珍しいことではありません。

矯正治療中に虫歯治療はできる?

矯正治療中に虫歯ができた場合、まずは虫歯治療を優先に行います。虫歯治療はかかりつけの歯科医院にて行うのが一般的ですが、一般歯科と矯正治療を一緒に併設している医院では、歯科医院を変えることなく虫歯治療を受けることができる場合もあります。矯正治療中の虫歯治療は、矯正装置を部分的に外すなどして治療を行いやすい状態にして行います。虫歯ができた部位によっては装置を外さずに治療をすることもあります。

虫歯ができないよう、口腔ケアに気を付けましょう

矯正治療中は虫歯リスクが高まります。虫歯ができてしまったら速やかに虫歯治療を受けましょう。神経まで達してしまうと被せ物が必要となり、矯正治療にも影響が出てしまいます。

矯正治療で歯並びが改善したあとに美しい口元を手に入れるため、口腔ケアをしっかりと行い、定期的にクリーニングを受けて虫歯になりにくい口腔内環境を整えましょう。

矯正治療に伴う歯肉退縮について

成人の方が矯正治療を受けるケースが増えています。審美性の改善に加えて、歯の健康維持のために歯並びを整えることは推奨されるべきことですが、矯正治療に伴う副作用も存在します。そのひとつが「歯肉退縮」です。

成人の矯正治療で起こりやすいこととは

最近では成人の方でも矯正治療を行う方が増えています。中には50代、60代になって矯正治療を始められる方もおられます。基本的に矯正治療は、歯と歯ぐきが健康であれば年齢関係なしに受けることができます。

しかし成人の矯正治療で気を付けなければいけないことがあります。そのひとつが「歯ぐきの状態が変わること」です。

成人の矯正治療を希望される方の中には、歯周病の予防を目的とした方もおられます。歯周病は、ミドルエイジにおける歯の損失原因のトップとも言え、今では虫歯よりも歯周病によって歯を失う方が増えています。歯周病にならないために、あるいは歯周病治療を終え、再発を防ぐために矯正治療を始めるといったケースが増えてきているようです。

そこで気を付けるべきことが、先ほども述べた「歯ぐきの状態」です。歯ぐきが下がり、歯の根元が見えてしまうことを「歯肉退縮」といい、矯正治療後によく起こる症状として知られています。

歯肉退縮が顕著に表れる部位としては、前歯です。全ての方に起こるとは限りませんが、前歯が長めで歯ぐきが薄い方は、歯肉退縮が起こりやすくなります。特に歯周病の方は元々歯ぐきが下がっていることが多く、矯正治療を行うことでそのリスクがより高くなります。また、ガタガタの歯並びの場合も歯が並んできたときに隙間が現れてくる場合があります。歯ぐきが下がった部分は歯と歯の間に「ブラックトライアングル」として現れ、見た目が気になる方もおられるかもしれません。また歯肉の状態により、前歯ではなく他の部位に現れることもあります。

歯肉退縮が起きた場合の対処法

では矯正治療後に歯肉退縮が起きた場合、対処法はあるのでしょうか。歯肉退縮が起きた場合、回復させることは可能ですが歯ぐきの再生処置などが必要になり、かなり大掛かりになってしまうことがあります。

また歯肉退縮により歯根が露出し、知覚過敏の症状が出る場合は、知覚過敏用の薬を塗布したり、レジンによる処置などが行われます。

その他に気を付けるべきこととしては、歯周病にならないよう普段のブラッシングに細心の注意を払うことが挙げられます。歯と歯の境目のブラッシングを念入りに行わなければいけませんが、ゴシゴシと乱暴に力を入れてブラッシングすると、歯ぐきが下がる原因になり、矯正治療後に影響が出てしまう可能性があります。ブラッシングは優しい力で丁寧に行うようにしてください。

成人の方が矯正治療を行う場合、歯列を整えることだけでなく、歯ぐきのラインを整えることも予測しながら治療計画を立てることが大切です。

歯根吸収

「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」は矯正治療の副作用としてよく知られています。歯根吸収とは文字通り歯の根っこが吸収して短くなってしまうことです。軽度の場合はほとんど問題になりませんが、重症化すると、矯正治療終了後に歯がグラグラになってしまったり、歯周病が進行した際に歯が抜け落ちるリスクが上昇する危険性があります。今回は、歯根吸収についてお話します。

 

矯正治療中に歯根吸収が起きやすい条件とは?

矯正治療中に歯根吸収が重症化する原因として下記のようなものが知られています。

・歯に対して過度に大きな力がかかった場合

・矯正治療が長期間になった場合

・歯の移動量が大きい場合

・硬い骨(皮質骨)に当たるような移動をした場合

 

吸収しやすい歯根がある?

下記のように、歯根そのものに歯根吸収を起こしやすい素因がある場合もあります。

・生まれつき歯根が短い(短根)

・歯の打撲、脱臼など外傷の既往がある

・歯根の形態異常(先が尖っている・曲がっているなど)

・歯の神経が死んでいる

・歯の根っこの治療をしたことがある

また、アレルギー疾患や喘息、甲状腺機能低下症などの全身疾患も歯根吸収の重症化に関わっていると言われています。

 

矯正治療以外での歯根吸収

矯正治療と関わりなく歯根吸収が起こる場合もあります。

・歯根周囲に炎症がある場合

・隣の歯が歯根にぶつかるような方向に生えてきた場合

・骨の中に病変(腫瘍・嚢胞など)があって歯根に当たる位置にある場合

 

歯根吸収のリスクが高い場合の対応

特に上記のようなリスクのある方が矯正治療を検討される場合は、まず治療計画を無理な移動のないものにする必要があります。大幅な移動はできる限り避ける方が良いと考えられます。また、矯正治療開始前に歯根吸収が進行している歯がある場合は、その歯を抜歯する計画を立てることもあります。さらに、治療中はできるだけ弱い力をかけて移動させるようにします。

全ての症例で実害のあるような歯根吸収が生じるわけではなく、歯根吸収が起きても無症状の場合がほとんどです。矯正歯科医師は歯根吸収をできるだけ起こさないように、さまざまな点で注意を払って治療を行っていますが、今のところ確実な予防法や治療法が確立されているとは言えないため、完全にコントロールすることは難しいのが現状です。

歯はどうして動く?

矯正装置を付けることで歯が少しずつ動かし、歯並びや噛み合わせを整えていきますが、皆さんは「なぜ矯正装置を付けると歯が動くの?」と思ったことはありませんか。今回は、歯が動くメカニズムについてお話したいと思います。

歯が動くのは「歯根膜」の存在による

歯は、歯ぐきに付着して並んでいるのではなく、歯槽骨という骨によって支えられています。そして歯の根の周りには「歯根膜」というごく薄い膜があり、歯と歯槽骨を繋げています。この歯根膜は繊維を主体とした組織で、食事などで噛む力がかかったとき、歯に加わる衝撃を吸収、緩和して和らげるクッション的な役割を持っています。矯正治療では、この歯根膜があるおかげで歯が動くことができるとも言えます。

矯正治療で歯が動くのはなぜ?

ワイヤー矯正やマウスピース矯正などで矯正装置を装着し、歯に力を加えると、その力が歯根膜に伝わります。力が加わることで、歯が動く側の歯根膜は縮み、反対側は引っ張られるため歯根膜が伸びます。そして歯根膜は一定の厚みを保とうとする性質を持っています。矯正装置によって力が加わることで歯根膜が伸び縮みし、歯根膜の厚みに変化が起こると、歯を支えている骨にある変化が起きます。

その変化とは、「骨を作る細胞(骨芽細胞)」と「骨を溶かす細胞(破骨細胞)」が集まってきて働きだすことです。縮んだほうの歯根膜は元の厚みに戻ろうとする性質があるため、骨を溶かす細胞の働きが活発になります。反対に、伸びたほうの歯根膜は縮もうとする性質があるため、骨を作る細胞をが活発になります。また、近年では骨の中に埋め込まれた細胞(骨細胞)が骨にかかる力をセンサーのように感知して、骨芽細胞や破骨細胞の働きに関わっていることもわかってきています。このように、矯正治療で歯に力が加わると、骨を溶かす細胞と骨を作る細胞が働き、骨が作り替わるため、移動した位置で歯根膜が元の厚みに戻ります。この働きを繰り返すことで歯が動いていきます。

年齢が若い方で歯の移動が比較的スムーズに行いやすいのは、この骨の作り替え(骨代謝)が盛んにおこなわれるためとも言えます。

歯は1か月にどのくらい動く?

ご紹介したように、矯正治療では骨代謝や歯根膜の性質を利用して歯を少しずつ動かしていきます。矯正治療に適した弱い力を加えながら歯を動かすため、1カ月に動かせるのはおよそ0.5mmから1mmと言われています。早く歯を動かしたいからといって通常よりも強い力を加えると、歯の根などに余計なダメージを加えてしまうことがあります。

なお、矯正治療を始めると歯が揺れ始めることがありますが、お話しした通り歯の周りの骨が作り替わっていく過程でよく起こることであり、適切な力の大きさであれば歯が抜けることはありませんのでご安心ください。

ページトップへ