矯正ブログ

萌出遅延、埋伏歯(生え変わりの異常)

乳歯が抜けてもなかなか永久歯が生えてこない場合、顎の骨や歯に何らかの原因があることが考えられます。生え変わりには個人差があり、その幅は広いですが、平均的な歯の生え変わりの時期よりも大幅に歯が生えるのが遅れることを「萌出遅延(ほうしゅつちえん)」、歯ぐきの中に永久歯が埋まったまま生えてこない状態の歯を「埋伏歯(まいふくし)」と言い、生え変わりの異常と診断されます。今回は、萌出遅延と埋伏歯についてお話をいたします。

萌出遅延と埋伏歯について

萌出遅延は、主に上顎の前歯に起こりやすく、特に中切歯(1番目の歯)と犬歯(3番目の歯)によく見られます。これらはとても目立つ場所なので、なかなか歯が生えてこないと心配になることと思います。また学校の歯科検診で指摘され、心配になって歯科医院を受診する場合も多いでしょう。

生え変わりのスピードには個人差があり、その差は2年ぐらいだと考えられています。そのため、生え変わりが遅れていると感じられてもただ単に個人差の範囲内である場合もあります。萌出遅延かどうかのひとつの目安はレントゲン撮影による画像診断です。レントゲン写真では、永久歯がきちんとあるかどうかを見極めるだけでなく、定期的に撮影し過去のレントゲン写真と比較することで、歯の位置や成長の状態を確認することができるため、萌出遅延かどうかを判断する重要な判断材料になります。また、左右の同じ名前の歯の生え変わり時期に半年~1年以上差があるかどうかも、萌出遅延を疑う目安となります。

埋伏歯は、顎の骨の中や歯ぐきの粘膜下に歯が存在しているのに、歯ぐきの外へ生えてこない状態を言います。埋伏歯で多いのは親知らずですが、その他に上顎の中切歯(1番目の歯)や犬歯(3番目の歯)などでも多くみられます。また、歯の半分だけが歯ぐきの外へ生えている「半埋伏(はんまいふく」という状態の歯も埋伏歯の一種です。

原因について

萌出遅延や埋伏歯の原因は様々で、歯だけでなく全身の健康状態によるものも考えられます。

・遺伝性歯牙形成不全、骨系統疾患、くる病など栄養障害などの全身疾患が原因の場合

・歯胚の位置や方向の異常、スペース不足、過剰歯の存在、癒合歯、乳歯の早期損失などが原因の場合

萌出遅延や埋伏歯を放置することによるリスクとは?

乳歯が抜けたけどなかなか永久歯が生えてこない、乳歯が全然抜ける気配がないなど、萌出遅延や埋伏歯が考えられるにもかかわらず、そのまま放置するとどのようなリスクがあるのでしょうか。

  • 歯並びを悪くする

乳歯が抜けたにもかかわらず、なかなか永久歯が生えてこない場合、隣の歯がだんだん傾斜してきたり、咬みあう相手になる歯が伸びてくるため、永久歯の生えてくるスペースが狭くなります。その結果歯並びが崩れてしまいます。

  • 埋まっている歯と顎の骨が癒着する可能性が高まる

長い間歯が顎の骨の中に埋まっている状態が続くと、埋まっている歯と骨が癒着してしまう(くっついてしまう)リスクが高まります。これを「骨性癒着(こつせいゆちゃく)」と言い、歯を引っ張り出すことが難しくなり、抜歯の対象となります。

  • 埋伏歯が他の歯や顎の骨に悪影響を与える

埋伏歯の歯冠が他の歯の歯根にぶつかるような位置にあるときに、歯根吸収を引き起こす場合があります。歯根吸収が進行すると、最悪の場合その歯は抜歯となることもあります。また、埋伏歯が「含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)」という嚢胞をつくる場合もあり、嚢胞が大きくなると周りの歯を押して歯の位置がおかしくなったり、嚢胞により顎の骨が大きく吸収されることもあります。

永久歯がなかなか生えてこない状態が続いたら、早めに歯科医院に相談しましょう

歯の生え変わりは個人差が大きいため、不安に感じることも多いと思います。ただ単に遅いだけなら心配いりませんが、萌出遅延や埋伏歯がある場合、歯並びや歯の健康に大きく影響してしまいます。お子さんの永久歯がなかなか生えない場合は、早めにかかりつけの歯科医院に相談してみて下さい。

空隙歯列

歯と歯の間にすき間が目立つことはありませんか?いわゆる「すきっ歯」と呼ばれる歯並びは、見た目が気になることと思います。では歯と歯の間にすき間がある歯並びは、見た目以外にどんな問題点があるのでしょうか。

歯と歯の間にすき間がある「空隙歯列」について

いわゆる「すきっ歯」と言われる歯と歯の間にすき間がある歯並びは専門的には「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼ばれる不正咬合の一種です。前歯の間だけすき間があるケースもありますが、空隙歯列は顎が大きく、それに対し歯が小さいことで起こる不正咬合です。また、歯が並ぶためのスペースが広く余っている状態とも言えます。顎が小さく、永久歯が並ぶスペースが足らないと歯と歯が重なって歯並びがガタガタになりますが、空隙歯列は顎が大きく歯が小さいため、正しく並んでもすき間ができてしまうのです。

空隙歯列の原因

では歯と歯の間にすき間ができるのは何が原因ででしょうか。

  • 顎が大きい・・・上でも述べたように、顎が通常よりも大きいことでスペースが余り、歯と歯の間にすき間ができてしまいます。
  • 歯が小さい・・・顎の大きさに対して歯が小さい場合も、歯並びにすき間ができる大きな要因となります。
  • 舌が大きい・・・舌が大きいことも、歯と歯にすき間が生じてしまいます。通常舌は歯の内側に収まっていますが、舌が大きすぎると歯や顎の骨を押してしまって歯を外側へ動かしてしまうことも考えられます。
  • 歯の本数が少ない・・・通常、成人の歯は親知らずを抜いて数えると上下合わせて28本です。ところが何らかの原因で歯が足りない先天性欠損の場合、欠損している歯の分のスペースが余ってしまいます。そのためすき間が生じてすきっ歯となってしまうことがあります。また歯の本数は足りていても骨の中に埋まったまま生えてこないためすき間ができるケースもあります。

空隙歯列の問題点

すきっ歯の大きな問題点は、まず見た目です。空隙歯列の方は、すきっ歯だから恥ずかしい、マスクが手放せないなど審美的なコンプレックスを抱えていることがありますが、機能面に関しても問題が生じてきます。では次に、審美面以外のすきっ歯の問題点を挙げてみましょう。

  • 咀嚼に問題がある・・・食べ物が噛み切りにくいといった、咀嚼に問題が生じます。しっかり咀嚼できないと、胃腸にも負担がかかりやすくなります。
  • 発音が不明瞭になる・・・歯と歯のすき間から空気が漏れて、発音が不明瞭になってしまいます。
  • 顎の関節に負担がかかりやすい・・・一見すると噛み合わせに問題がないよう思えるかもしれませんが、噛み合わせにズレがある場合が多く、顎の関節に負担をかけてしまうことがあります。最悪の場合、顎関節症を引き起こしてしまう可能性も否定できません。

このように、歯と歯のすき間は審美的な問題だけでなく、機能面にも影響が出てしまいます。このすき間は矯正治療をすることで改善が可能ですが、場合によっては矯正以外の歯科治療が必要になる場合もあります。ただのすき間、と片付けずに、いちど歯科医院を受診することをお勧めします。

交叉咬合

歯は本来、上の歯が下の歯を少し覆った状態で生え揃っています。しかし、下の歯列が上の歯列よりも外側に出ている、あるいは臼歯部が横にずれて噛み合っており、上下の前歯の中心がずれている状態を交叉咬合(こうさこうごう)と言い、不正咬合の一種と診断されます。

交叉咬合の原因

交叉咬合はクロスバイトとも呼ばれており、幼少期の歯並びでも起きることがあります。

交叉咬合は顎や噛み合わせがずれてしまっているため、噛み合わせだけでなく、顔の歪みが多く見られます。つまり正面から見たとき、顔の非対称具合が目立ってしまいます。

交叉咬合の原因は、他の不正咬合と同じく、上顎と下顎の大きさのアンバランスにより起こる先天性のものと、頬杖や横向きで寝るなどの癖による後天的なものが考えられますが、幼少期の頃は骨格的にずれているよりも、上顎の歯列の狭さや噛み合わせのズレが原因で、奥歯の噛み合わせが横にずれていることがほとんどです。

しかし中学生くらいになると、口元にズレが生じていることが顕著になり、見た目にも問題が出てきます。特に思春期ごろの女子の場合、見た目が大変気になってしまうことと思います。また奥歯の噛み合わせが大きくズレることで顎に負担がかかり、顎関節症になる恐れもあります。

交叉咬合をそのままにしておくことで生じる問題点とは

交叉咬合の大きな問題点は、噛み合わせのズレと見た目です。噛み合わせが横に大きくズレていると口元が大きく歪み、顔全体のバランスが悪くなります。

また噛み合わせのズレにより、顎の骨に負担がかかりやすく、口が開きにくい、顎が痛いなど顎関節症を引き起こしてしまうこともあります。

矯正治療だけでなく、外科処置が必要になることも

交叉咬合の治療の多くは、狭い歯列の拡大を行います。拡大装置を装着して歯列を横に広げることで改善を促しますが、状況によっては成人後を機に、外科手術を行ったうえで矯正治療が必要となる場合もあります。この場合、保険が適用となるケースも考えられるので、歯科医師によく確認して下さい。

交叉咬合かどうかのチェックポイント

不正咬合には色々ありますが、交叉咬合は案外見つけにくいかもしれません。交叉咬合と気付かずにそのまま過ごしていると、成長に伴って口元の歪みが顕著になってしまう恐れがあります。そこで交叉咬合かどうかのチェックポイントをご紹介しましょう。

・上下の前歯の中心は合っていますか?

・奥歯や横の歯の噛み合わせが上下逆になって下の歯が外側に出ていませんか?

このような症状が当てはまる場合、交叉咬合が疑われます。もしかして交叉咬合かも?と思われる方は、速やかに矯正歯科を受診しましょう。

過蓋咬合

奥歯で噛んだ時、通常は上の前歯が下の前歯を2~3mmほど覆います。ところが上の前歯が下の前歯をすっぽりと覆い隠して、下の前歯がほとんど見えない状態の噛み合わせを「過蓋咬合(かがいこうごう)」と言います。では過蓋咬合の問題点や、放置した場合どのようなリスクを負うのか、詳しくご説明しましょう。

「噛み合わせが深い」過蓋咬合の問題点とは?

過蓋咬合は、奥歯で噛んだ時に上の前歯が下の前歯をほぼすっぽりと覆った状態になります。一見すると歯がきれいに並んでいることもあるため、出っ歯や受け口に比べるとさほど気にならないかもしれませんが、そのまま放置しておくことで、お口の中に次のような問題点が生じてきます。

  • 下の歯がすり減る・・・上の歯が下の歯を覆い過ぎて深い噛み合わせになるため、下の歯列がすり減ってしまいます。歯の先端がすり減り過ぎると象牙質が見えてしまう「咬耗症」になる恐れがあります。
  • 顎が動きづらくなる・・・上下の歯が接触しすぎており、下顎の自由な動きを妨げてしまいます。
  • 出っ歯を誘発する・・・噛みこみが深いことで下の歯が上の歯に強く接触し続けると、上の前歯が外側へ傾斜し、出っ歯の原因となります。
  • 奥歯の被せ物が外れやすくなる・・・過蓋咬合は奥歯にかかる負担が大きくなる噛み合わせです。そのため奥歯に被せ物が入っている場合、外れたり破損する原因となります。

過蓋咬合の原因

過蓋咬合になる原因は、遺伝要素や歯の異常などが考えられます。先天的な要因としては、下顎の成長が足りない、上顎の成長が大きいなど、上下の顎のバランスが悪いことや、奥歯の高さが足りない場合などが挙げられます。

いっぽう後天的な要因として、奥歯が抜けたまま放置しておくことで噛み合わせが低くなる、強い噛みしめ、下唇を噛む癖などが過蓋咬合を引き起こす可能性があります。

過蓋咬合を放置するリスク

過蓋咬合は、歯列矯正をすることで深すぎる噛み合わせを浅くすることが可能です。しかしそのまま放置すると、下顎に負担がかかりすぎて顎が動かしにくくなることがあります。その結果顎がカクカク言う、口が開けにくい、顎が痛いなど、顎関節症を引き起こすことがあります。

また咀嚼しにくい、笑った時に歯ぐきがむき出しになってしまうなどの機能的・審美的な問題も起こります。

年を重ねるごとに噛み合わせは少しずつ深くなるため、過蓋咬合をそのままにしておくとますます症状が悪化してしまいます。笑った時に下の歯がほとんど見えない場合、過蓋咬合が疑われますので気になる方は早めに歯科医院へお越しください。

 

 

開咬

不正咬合のひとつに「開咬(かいこう)」というものがあります。開咬はオープンバイトとも呼ばれており、奥歯で噛んだ時に上下の歯にすき間ができる噛み合わせです。今回は開咬の特徴や、放置した場合のリスクなどについてご説明いたします。

 

開咬とは?

開咬とは、奥歯で噛んだ時に歯が噛み合わず、上下の歯の間にすき間ができてしまう状態を言います。正しい噛み合わせは奥歯で噛んだ時に、上の歯が下の歯を数mm覆っていますが、前歯部開咬になると上の前歯が下の前歯を全く覆いません。開咬は歯並びそのものは悪くないケースもあり、正面から見ると問題がないように見えることもあるかもしれません。しかし開咬の程度によっては正面から見てもわかる場合もあります。また、上下の前歯に間があいていると、前歯で食べ物を噛み切ることができないため、食事において不便を感じることもあります。

開咬の原因

では開咬はどのようなことが原因で起こるのでしょうか。

  • 幼いころの指しゃぶりや舌を使った癖などを長期間行うことで少しずつ歯が移動したことによるもの
  • 骨格的な問題によるもの
  • 鼻炎やアデノイド、扁桃腺肥大などの呼吸器系疾患があり、口呼吸が行われることによるもの。(口呼吸を長期間続けているとお口の中の筋肉のバランスが崩れてしまうため、開咬に繋がることがあります。)

開咬による問題点とは

出っ歯や受け口に比べると、見た目はそれほど問題はないかもしれません。しかし開咬は見た目以上に機能に大きな問題を抱える不正咬合です。では開咬を放置することで、どのような問題が起こるのでしょうか。

・前歯で食べ物を噛み切れない・・・食材によっては、前歯で噛み切る必要があるものも多数あります。ところが開咬は前歯にすき間があるため前歯で噛み切ることができません。そのため食べられるものが前歯を使わない食材に限定されてしまう場合があります。

・奥歯に過度の負担がかかる・・・開咬の大きな問題点のひとつに、奥歯に大きな負担がかかることがあります。そのため長期的にみると奥歯の詰め物や被せ物が外れやすくなったり、歯にヒビが入ったり、歯が割れてしまう恐れがあります。

・発音が不明瞭になる・・・上下の前歯の間にすき間があることで空気が漏れたような発音になってしまいます。そのため発音が不明瞭になり、相手にとって聞きづらくなることがあります。

・口が閉じにくく、口腔内が乾燥しやすくなる・・・お口の中が乾くと唾液が少なくなり、細菌が増えて虫歯や歯周病、口臭の原因となります。

 

このように、開咬を放置しておくことで様々な問題を抱えてしまいます。開咬かも?と思われる方、検診などで開咬を指摘された方などは、できるだけ早めに歯科医院へ相談して下さい。

 

下顎前突(受け口)

歯は本来、上の前歯が下の前歯を数mm覆っています。ところが下の前歯が上の前歯を覆っているような噛み合わせがあります。それはいわゆる「受け口」と呼ばれている不正咬合です。受け口は横から見ると下顎が前方へ出ているため、専門的には「下顎前突(かがくぜんとつ)」と呼んでいます。では受け口をそのまま放置すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。

受け口の特徴と問題点

受け口は大きく2種類に分かれます。どちらも下の前歯が上の前歯よりも前へ出ている状態を言います。

  • 機能性反対咬合・・・下の前歯が上の前歯を覆っており、前方へ出ている状態。機能的に(歯の位置関係などが原因で)反対になっているので、自分で下顎を動かせば後ろに下げることができる。また上下の前歯の先端同士が触れる「切端咬合(せったんこうごう)」というかみ合わせもある。
  • 骨格性下顎前突・・・下顎が大きい・上顎が小さいなど、骨格的な要因による受け口。下顎前突の程度によっては手術を伴う矯正治療が必要になる場合がある。

受け口は、まず見た目に大きな問題があります。下顎が前方に突き出していることでエステティックラインが大きく崩れてしまいます。そのため横顔の見た目は、受け口の大きなコンプレックスになりやすいです。

また前歯で食べ物を噛み切ることが難しいことも日常生活を送る上での大きな問題点となります。前歯で噛み切る食べ物は意外と多いですが、そのような食べ物を食べるときに前歯で噛めないことに不便を感じます。受け口は発音も不明瞭になる傾向が強く、受け口の程度によっては日常生活においてもたびたび不便を感じてしまう場合があります。

受け口を放置するリスク

色々な不正咬合でも、受け口は早期に治療を開始する必要があります。そのまま放置すると、下顎の成長にともない、だんだん顎が前方へ出ていわゆる「しゃくれ」と呼ばれるような見た目になってしまいます。

受け口になると噛み合わせにも当然悪い影響が及んでしまいます。そのため顎の骨に負担がかかりやすく、将来的に顎関節症を引き起こす恐れがあります。また受け口で前歯が噛んでいない場合、奥歯への負担が大きくなり、奥歯の寿命が短くなる場合もあります。このように、受け口を放置すると見た目だけでなく、顎の骨や歯の寿命などにも影響が及んでしまいます。

受け口かな?と心配する方は早めの受診を

お子さんの歯並びが何となく受け口っぽい・・・このように感じる方は、早めに歯科医院を受診してください。大人になってからの受け口の治療はかなり大変です。何となく下の歯が出ているかな・・・このようにご心配がある方も、早急に歯科医院を受診して下さい。

 

 

上顎前突(出っ歯)

歯が前方へ出ている「出っ歯」は、ご本人にとって大変なコンプレックスとなることがあります。出っ歯は専門的には「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と言いますが、字のとおり上顎が前方へ出ているため、前歯や上の歯全体が前方へ突き出して見えてしまうため、特に横顔にコンプレックスを抱くことが多いと思われます。では上顎前突をそのままにしておくと、どのような悪影響が出てしまうのでしょうか。

出っ歯の原因

出っ歯の原因は、骨格などが原因の先天性のものと、長期間の指しゃぶりなどによる後天的なものに分けられます。骨格が原因の場合、両親の遺伝が強く出ることが多いようです。

一方、後天的な原因としては、幼少期の長期にわたる指しゃぶりや口呼吸などが考えられます。指しゃぶりは赤ちゃん時代は生理的な行為ですが、いつまでたっても指しゃぶりを続けていると、指を吸う力や指の圧力により前歯が前方に出てしまいます。

また口呼吸も出っ歯の原因となる場合があります。呼吸は本来鼻で行いますが、口がぽかんと開いていると舌の位置が下方に下がります。その結果、上顎の歯列の横幅が狭くなり、さらに、前歯に唇による外側からの圧力がかからないため、前歯が出てしまうと考えられています。

この他にも日常的な様々な癖により歯列が狭くなり、前歯が出てしまうことがあります。

出っ歯を放置するとどうなる?

出っ歯は審美的に問題を引き起こすだけではありません。出っ歯をそのままにしておくことで、次のような症状が起こる可能性があります。

・口が閉じにくく、口呼吸になりやすい

・虫歯や歯周病になりやすい

・お口の中が乾燥して口臭などの原因になる

・口元をぶつけたとき、前歯が折れてしまう危険がある

特に問題となるのは、口呼吸です。先ほど口呼吸が出っ歯の原因になると触れましたが、その逆も起こります。出っ歯で口が閉じにくいと、どうしても口で呼吸をしてしまいます。口呼吸をすることで口の中が乾燥し、唾液が少なくなってしまいます。その結果、お口の中の細菌が増え、虫歯や歯周病リスクが高まってしまいます。口臭も同じで、口呼吸をすることでお口の中が乾燥し、口内細菌が増殖して口臭が発生してしまいます。

またアクシデントが起きた際にもリスクを伴います。もし口元をぶつけてしまった際、前歯が出ていると衝撃を受けやすく、前歯が折れてしまう可能性もあります。前歯が折れてしまうと最悪の場合、神経を取り除く治療が必要になることがあります。

出っ歯が気になる方、自分は出っ歯ではないかと不安に思う方は、歯科医院に相談してみて下さい。

叢生

歯並びのお悩みで最も多いと思われる、ガタガタの歯列は、見た目のコンプレックスが大きく、人前で笑うのが恥ずかしく感じる方もいらっしゃいます。ガタガタした歯並びの乱れを専門的には「叢生(そうせい)」と言います。今回は、叢生の特徴や放置した場合のリスクなどについてお話をいたします。

叢生になる原因は?

叢生は一般的に「乱食い歯」とも呼ばれる、デコボコとした歯並びです。ではなぜ歯並びがガタガタになってしまうのでしょうか。

乳歯がすき間なくぴっちりと生え揃っていると、一見きれいな永久歯が生えてくるのではないかと思うかもしれません。しかし顎が小さく、乳歯がすき間なく生え揃っている場合、高い確率で永久歯の歯並びが悪くなってしまいます。その理由は、永久歯は乳歯よりも大きいため、小さな乳歯が抜けた後に永久歯が正しい位置に並ぶスペースが不足するからです。その結果、生えてきた永久歯が並ぶことができずに押しやられ、歯が重なったり変な位置から生えたりします。一般的に言う八重歯も叢生のひとつです。

叢生の原因は遺伝的な要素も考えられます。両親が顎が小さかったり、八重歯だったりすると、お子さんも同じような歯並びや噛み合わせになる可能性が高くなります。

何らかの原因で乳歯が早く抜けてしまった場合も、叢生になる場合があります。乳歯は永久歯が押し上げてくることで抜け落ちますが、永久歯が生えてくるより前に乳歯が抜けてしまうと、両隣の乳歯が倒れ込んできてスペースを狭くしてしまいます。その結果、後から生えてきた永久歯が正しい位置に並ぶことができなくなります。

叢生をそのまま放置すると?

ガタガタの歯並びを放置したままにすると、どうなってしまうのでしょうか。叢生は見た目の問題だけでなく、虫歯や歯周病といった、お口の健康にも関わってきます。歯並びが悪いと歯磨きがし辛く、汚れがきちんと落とせません。特に歯と歯が重なった部分は歯ブラシの毛先が届きにくいため、どうしても汚れが残りがちです。その結果、残った食べかすに細菌が集まり、プラークを作り出します。プラークはネバネバとした白っぽい物質で、細菌の塊です。その中で虫歯菌が増えると虫歯に、歯周病菌が増えると歯周病になってしまいます。

また口臭の原因にもなります。食べかすが残ったままになるとやがて腐敗し、悪臭を放つようになります。このように、叢生をそのままにしておくと、虫歯や歯周病、口臭を引き起こしやすくなる可能性があります。

機能的顎矯正装置:ムーシールド

受け口(反対咬合)の治療法はいくつかあり、治療の開始時期によって使用する装置が違ってきます。今回は受け口を改善するための装置「ムーシールド」についてお話をいたします。

ムーシールドについて

まだお子さんが小さく、歯列が乳歯の時期に、既に受け口と診断された場合に使われるのが、ムーシールドと呼ばれる装置です。受け口は3歳児検診で見つかることが多く、そのまま成長するに伴って下顎が発達し、受け口が顕著になって治療も大変になってきます。そのため受け口と診断された場合は、早期に治療を開始することで症状が改善することがあります。

ムーシールドとは透明のマウスピースをのようなもので、夜寝るときに装着して受け口の改善を目指すための装置です。舌の位置が低く、下顎を舌で前方へ押し出してしまう癖があるお子さんや、既に反対咬合を気にして早期に治療を開始したいと希望されている場合などは、ムーシールドを使って治療を開始することがあります。

ムーシールドは歯並びを整えるというよりは、お子さんの顎の成長を利用して、正しい噛み合わせに誘導するといった目的で使われます。ムーシールドを装着することで得られる効果は、次のとおりです。

・早期に治療を開始することで、受け口の改善を目指す

・舌圧と口唇圧のバランスを保つ

・舌が下がることを抑制し、舌を高い位置に保つ

ムーシールドのメリットは、痛みが少なく、お子さんへの負担も少ないこと、3歳くらいから開始が可能なこと、取り外し式のため、食事や歯磨きに支障がないことが挙げられます。

ムーシールドのデメリットは、ムーシールドによる治療で受け口が改善した後にも、成長に伴って下あごが大きくなると再び受け口になる可能性があることです。

ムーシールドの装着時間について

ムーシールドは、主に就寝中に使用します。しかしできるだけ長い時間装着することで効果が得られやすくなるため、できれば起きているときにも装着すると良いでしょう。まだ小さいお子さんは、起きているときにムーシールドを付けることを嫌がるかもしれませんが、例えばテレビやDVDを見ている間などを利用すれば、意識がムーシールドから外れやすくなるでしょう。

ムーシールドの装着期間は3~8か月くらいが目安です。上下の噛み合わせが正しく改善したあとも、1年ほどは継続して装着することをお勧めします。

ただ受け口の治療は予見が難しく、ムーシールドでの治療法が一概に正しいとは言えないこともあります。しかし受け口をそのまま放置しておくとどんどん悪化するため、受け口と診断された、お子さんが受け口かもしれないと心配な方は、早期に歯科医院を受診してください。

チンキャップ

お子さんの歯並びのお悩みのひとつに「受け口」がありあす。受け口は反対咬合とも呼ばれる、噛み合わせの異常です。受け口の治療法はいくつかありますが、その治療法のひとつに「チンキャップ」という装置を使った方法があります。今回は、チンキャップについて詳しくお話をいたします。

受け口の治療の必要性について

奥歯で噛んだときに、上の前歯が下の前歯を前後・上下的に2~3mmほど覆っているのが正常な状態です。しかしその状態が逆になっている場合、つまり下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態を「受け口」「反対咬合」などと言い、不正咬合の一種であるため治療が必要になります。受け口は遺伝要素も強く、そのほとんどが骨格が原因です。両親が受け口の場合、高い確率でお子さんも受け口になります。

横から見ると顎が出ているようにも見えるため、見た目に問題が生じます。また見た目だけでなく、受け口をそのままにしておくと噛み合わせのズレが大きくなり、咀嚼しにくい、発音しにくい、顎が痛くなるなど様々な悪影響が出てくる場合があります。そのためお子さんが受け口と診断された場合は、早期に治療を開始することが望ましいでしょう。

しかし、受け口の治療の難しさは、発育時期の下顎の成長にあります。一般的に身長が伸びる時期に伴って下顎の骨が前方へ成長します。目安としては、男の子が中~高校生、女の子では小学校高学年ごろと言われており、この時期までに下顎が成長して前方へ出てくるのを抑えるために、チンキャップを装着して治療をする場合があります。

チンキャップとは

チンキャップとは、下顎の成長を抑える装置で、まだ下顎の成長が残っていると判断される時期に使われます。この装置を装着することで、下顎の成長を前方から下方へと変える効果があると言われています。

チンキャップはヘッドキャップ、ゴムバンドそして顎に付けるチンキャップという構造になっています。ヘッドキャップからゴムバンドでチンキャップを引っ張り、下顎全体を後方に移動させることで下顎と上顎の位置関係を調整していきます。

しかし、全ての受け口に対して効果があるわけではありません。反対に、チンキャップを使用することで新たな骨格の問題を引き出してしまう可能性があるとも考えられています。その結果、外科手術を余儀なくされる場合もあり、チンキャップの使用については慎重な判断が必要となります。

いずれにしても、受け口をそのまま放置しておくと下顎がどんどん成長し、横から見ると顎がしゃくれたように見えてしまいます。審美性と機能性、そして体にとっても良いことはありません。受け口が気になるお子さんは、早めの歯科受診が必要です。

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