歯の生え変わりで注意すべきこと

歯の生え変わりで注意すべきこと

乳歯が抜けて永久歯に生え変わる時期になると、歯並びが気になり始めるのではないでしょうか。整った歯並びは口元を清潔に見せてくれるだけでなく、お口の健康維持にも大いに影響します。永久歯の歯並びに大きく影響するのが、歯の生え変わりです。では歯の生え変わりの時期にはどのようなことに注意しなければいけないのでしょうか。

乳歯列期から生え変わりの時期の間で気を付けるべきこととは?

≪乳歯の虫歯≫

乳歯は永久歯が生えることで役目を終えます。しかし乳歯が虫歯になると、後から生えてくる永久歯列に影響が出ることがあります。永久歯が生える時期よりも早くに虫歯で乳歯を失ってしまうと、抜けた両隣の歯が傾斜して永久歯が生えるスペースを狭くしてしまいます。その結果永久歯が正しい位置に収まらず、ガタガタの歯並びになってしまったり、永久歯が生えてこられなくなる(埋伏する)ことがあります。

また乳歯が虫歯になることで、後から生えてくる永久歯も虫歯のリスクが高くなる可能性があります。さらに、乳歯の虫歯がひどくなって歯根の先まで炎症が広がると、生えてくる前の永久歯にダメージを与えてしまう場合もあります。このように、乳歯の虫歯は次に生えてくる永久歯や歯列に悪影響を及ぼす可能性が高いため注意が必要です。

≪生えかけの永久歯≫

第一大臼歯(6歳臼歯)と、その奥の第二大臼歯(12歳臼歯)は乳歯がなく、永久歯が直接生えてきます。そのため生えかけの段階では歯肉が歯を覆い、歯と歯肉の間に汚れが溜まりやすくなります。汚れが溜まると細菌感染を起こし、歯肉が腫れたり出血が見られることがあります。歯磨きをしっかりと行い、できるだけ汚れを溜めないようにすることが大切です。

また生えたばかりの永久歯はエナメル質がまだ弱く、虫歯になりやすい状態です。生えたばかりの永久歯が虫歯にならないよう、しっかり歯磨きをして気を付けて過ごさなければいけません。

≪指しゃぶりなどの癖≫

指しゃぶりを長い期間行うと、前歯が前方へ傾き、出っ歯や開咬になる可能性があります。また舌を前方へ突き出すような癖も、歯を前方に押しやってしまうため、出っ歯や開咬になりやすくなります。生え変わりの時期にこのような癖がある場合には永久歯の歯並びに影響が出てきます。

乳歯の時期からケアをきちんと行うことが大切

「乳歯は抜けてしまうから」とケアをおろそかにすると、後から生えてくる永久歯に悪影響を与えてしまいます。健康で美しい永久歯列を手に入れるためには、乳歯の時期から継続した適切なケアが欠かせません。乳歯を大切にできるかどうかが、永久歯列の状態に強く影響してきます。

シザースバイト(鋏状咬合)

食べ物をかんだ時、頬の内側をかんでしまうことはありませんか?かんだところが口内炎になると痛みで非常に不快になることでしょう。頬をかんでしまう原因の一つとして考えられるのが、「シザースバイト」というかみ合わせの異常です。

頬の内側をかんでしまうかみ合わせとは?

正しいかみ合わせの場合、奥歯でかんだときに内頬をかむことはほとんどありません。しかし頻繁に内頬をかんでしまう場合、奥歯のかみ合わせの異常があることがあります。頬をかんでしまう原因となり得るかみ合わせの異常には「シザースバイト」というものがあります。ではシザースバイトとはどのようなかみ合わせなのでしょうか。

シザースバイトは、日本語では「鋏(はさみ)状咬合」と言い、奥歯でかんだときに上の歯が極端に外側に出ており、下の歯とすれ違ってしまっているかみ合わせです。よく見られる部位は、第二大臼歯です(一番奥の歯で、親知らずが生えている場合は、親知らずの手前の歯です)。

シザースバイトの場合、上の歯と下の歯の間に大きなすき間があり、食べ物をかむときに頬の粘膜が巻き込まれてしまうため、内頬をかんでしまいやすくなります。また、シザースバイトでは歯が大きく外側や内側に倒れていることが多いため、磨き残しが多くなり、虫歯や歯周病になりやすくなります。さらに、長期的に考えると、奥歯がきちんとかみ合わず、前歯に大きな負担がかかりやすくなります。

何度も同じところをかんでしまう場合は、シザースバイトになっている可能性があります。いちど鏡で奥歯のかみ合わせをチェックし、上の奥歯が下の奥歯よりも極端に外側へ出ていたり、上下の歯がすれ違っていないか確認してみましょう。

シザースバイトの治療法

奥歯がきちんとかみ合わない「シザースバイト」は、矯正治療によって改善が可能です。一般的なワイヤー矯正装置やマウスピース型矯正装置を用いたり、程度が軽いケースでは部分矯正でも改善が可能です。生え変わりの時期に早期発見できれば、比較的簡単に治療できる場合があります。逆にシザースバイトの歯を長期間放置していると、上下の歯の傾斜が強くなって深くかみ込んでしまい、治療が難しくなってしまうことも考えられます。

矯正治療を考えられている方のお悩みのほとんどは、ガタガタの歯並びや出っ歯、受け口といった審美的要素の問題です。どちらかといえば前歯ばかりが気になるもので、奥歯のかみ合わせにはなかなか気づきにくいことが多いです。シザースバイトかどうかご自身で判断するのは難しい思いますが、頻繁に内頬を噛んでしまう方は、奥歯のかみ合わせの異常が疑われます。このような症状にお悩みの方は、いちど矯正歯科で相談してみて下さい。

歯の形態異常

生まれつき通常と歯の形が異なることを、歯の形態異常(けいたいいじょう)と言います。今回は歯の形態異常にはどんなものがあるのかをご紹介します。

・矮小歯(わいしょうし)

矮小歯とは、通常の歯よりも大きさが小さい歯のことです。歯の形をそのまま小さくしたような形や、円錐形・栓状など正常とは異なる形のものなど形態は様々です。歯が小さいため、歯と歯の間にすき間が生じてしまい「すきっ歯」のような見た目にコンプレックスを抱く方が多いようです。

・巨大歯(きょだいし)

巨大歯とは、矮小歯とは逆に通常の歯よりも異常に大きい歯のことです。主に永久歯の前歯にみられることが多いです。顎の大きさとのバランスがとれないため、並びきれずにガタガタの歯並びや出っ歯になる場合もあります。

・癒合歯(ゆごうし)

何らかの原因により歯の卵である歯胚(しはい)どうしがくっついてしまい、そのまま完成した歯です。歯の外側(エナメル質・セメント質)だけでなく歯の内側の層(象牙質)、歯の神経(歯髄)までつながっている場合があります。乳歯だけでなく永久歯にも見られ、癒合部にある溝に汚れが溜まりやすく、虫歯に注意が必要です。

癒合歯の注意すべき点はこれだけではありません。癒合歯の40~45%において、後から生える永久歯が欠如していることが多く見られます。例えば乳歯2本が癒合している癒合歯は、あとから生えてくる永久歯が1本しかない場合が多く見られます。また生え変わりがうまくいかない場合もあり、歯並びの乱れや噛み合わせのズレに大きく影響します。

・癒着歯(ゆちゃくし)

癒合歯と似たような見た目と名前ですが、歯が生えた後に2本の歯のセメント質(歯の根っこの一番外側の層)だけがくっついたものです。そのため、それぞれの歯の神経は別々に分かれています。

・結節(けっせつ)の異常

生まれてくる前(胎生期)における何らかの発生異常の結果、歯の様々な部位に大きな結節(出っ張り)をつくる場合があります。歯の咬む面の中央にできる中心結節、上の奥歯の舌側にできるカラベリー結節などがあります。結節の部位によっては清掃しにくく汚れが溜まりやすい場合があり、虫歯リスクが高くなります。また中心結節は咬む面にあるため、結節が破折して神経が露出してしまう危険性もあります。

・歯根の形態異常

歯根彎曲(しこんわんきょく:歯根が大きく折れ曲がっている)、樋状根・台状根(といじょうこん・だいじょうこん:奥歯の歯根どうしがくっついて大きな塊になっている)、短根(たんこん:歯根の長さが生まれつき短い)などがあります。目に見えない部分の異常なので、レントゲンやCTを撮影したときに発見されます。歯根の形態異常があると、矯正治療で歯を動かしにくい場合があります。

・歯の形成不全(けいせいいふぜん)

何らかの原因によって歯が上手く形作られずに生えてくることを歯の形成不全と言います。形の異常と色の異常があります。全身的な病気・薬剤・遺伝などが原因の場合は左右対称に多くの歯に現れることが多く,局所的な原因(乳歯の炎症や外傷などで永久歯の歯胚にダメージが及んだ)の場合にはその部分の歯だけに異常が現れます。茶色っぽい・白っぽいなど生まれつき色が違う、生まれつき表面が削れたような形をしている歯は形成不全に該当します。歯の質自体が弱いことが多く、知覚過敏があったり、もろく崩れやすかったり、虫歯になりやすいこともあるため注意が必要です。

 

歯の形態異常を放置したら?

歯の形態異常は、歯並びの悪さや噛み合わせの異常を引き起こしやすく、そのままにしておくことで見た目だけでなく、虫歯や歯周病リスクが高まってしまう可能性があります。特に癒合歯の場合、高い割合で後に生えてくる永久歯がないため、全体的な噛み合わせの異常を引き起こしやすく、矯正治療によって正しい噛み合わせへ誘導する必要があります。

歯の形態異常がある場合は、状況に応じた治療を行うことで問題を回避できる可能性が高くなります。

 

 

歯の先天欠損(先天性欠如)

生まれつき歯が足りない状態を「先天欠損(せんてんけっそん)」または「先天性欠如(せんてんせいけつじょ)」と言います。本来、乳歯から永久歯に生え変わると、親知らずを除くと上下左右合わせて28本が生え揃います。しかし、何らかの原因で歯が足りない場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。今回は歯の先天欠損についてお話をいたします。

先天欠損の原因について

生まれつき永久歯が足りない先天欠損は1歯から数歯に及ぶことがあり、10人に1人という割と高い割合で起こっていると言われています。先天欠損がよく発生するのは、上下顎ともに第二小臼歯(前から5番目の歯)や側切歯(前から2番目の歯)です。

乳歯の下には、永久歯のもとになる「歯胚」という、歯の卵のようなものが存在します。この歯胚が育ち、やがて永久歯となって乳歯と生え変わります。

ところが先天欠損では、永久歯の元となる歯胚が何らかの原因で作られません。先天欠損のはっきりとした原因はわかっていませんが、遺伝や妊娠中の栄養不足、全身疾患の影響、お腹の中にいるときに薬の影響を受けてしまったことなどが原因として考えられています。

 

先天欠損による影響は?

先天欠損により永久歯が生えてこないと、乳歯が抜けずにそのまま残ります。乳歯は永久歯が押し上げることにより抜け落ちますが、永久歯がない場合、乳歯は残ってしまいます。しかしこの乳歯は一生残るかと言えば、そうとは限りません。乳歯は永久歯と比べて歯根が短く、少しずつ歯根が吸収されていき、やがて抜け落ちてしまいます。また乳歯は永久歯と比べて虫歯になりやすいため、虫歯になって治療を繰り返しているとやがて乳歯を失ってしまう場合もあります。いずれは抜け落ちる可能性が高い乳歯ですが、歯並びなどに影響を与えないためにも、しっかりと管理しておく必要があります。

先天欠損を放置することによるリスクとは?

乳歯が抜け、歯がない状態が長期間続くと、抜けた両隣の歯が倒れ込んできたり、噛み合うはずの位置の歯が伸びてきてしまうことがあります。このような状態になると噛み合わせが悪くなってしまい、歯並びや咀嚼に影響が出てしまいます。また歯並びが悪くなるとプラークが溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病の原因にもなります。

先天欠損の治療について

先天欠損かどうかは、レントゲン撮影で分かります。先天欠損と診断された場合、矯正治療により隙間を閉じて、歯並びや噛み合わせを整えていく方法が一般的です。また、年齢や状況によってはブリッジなどの被せもの・入れ歯・インプラントなどで隙間を埋める治療を行う場合もあります。

また乳歯が残っている場合、乳歯を抜歯をするかどうかは長期的な判断に委ねられ、すぐに抜歯するとは限りません。歯並びなどに悪影響が出ないよう、できるだけ乳歯を保存する方向で計画を立てます。

また、永久歯の先天欠損が合計6歯以上あると診断された場合の矯正治療は保険適用となります。

乳歯がなかなか抜けない・永久歯が全然生えてこない場合、先天欠損が疑われます。長期的な治療計画が必要なため、おかしいなと思ったら早めに歯科医院を受診しましょう。

過剰歯

過剰歯とは、正常な歯の本数より多く存在する歯です。過剰歯はそのままにしておくと、歯並びに影響が出てしまうことがあります。

過剰歯について

正常な状態の場合、乳歯は計20本、永久歯は親知らずを除くと計28本、親知らずを合わせると計32本から成り立っています。しかし、それ以上の本数の歯が見られる場合、その歯は過剰歯であり、男女を比べると、統計的には男性の方が過剰歯を持っていることが多いと言われています。

過剰歯が見られる部位は様々ですが、上の前歯、上の奥歯そして下の奥歯によく見られます。中には上顎の真ん中のあたりに生えているケースや、一本だけでなく多数生えているケースなどもあり、インターネットで画像検索すると、衝撃的な画像を目にすることがあります。

過剰歯は正常な歯とは形態が違うことが多いため、区別がつきやすいのが特徴です。しかし顎の中に埋まったまま生えてこないことも多く、レントゲンを撮影して偶然発見されることもしばしばあります。

過剰歯の原因は?

ではなぜ過剰歯ができるのでしょうか。お口の中には永久歯の卵である「歯胚」があり、顎の骨の中で成長して永久歯となり生え変わります。しかしこの歯胚が何らかの原因で過剰に作られたり途中で分裂してしまうことで、歯が通常の数よりも多くなってしまうと考えられています。

過剰歯をそのまま放置するとどんなリスクがある?

過剰歯が生えている、または埋まっている位置によっては、歯並びや噛み合わせに影響を及ぼすことがあります。また、過剰歯が生え変わりの邪魔をしてしまい、生え変わりの異常である萌出遅延や埋伏歯の原因になる場合もあります。

特に上の前歯に過剰歯の存在が認められ、かつ萌出(生えている状態)している場合、早期に抜歯を行います。まだ萌出しておらず、顎の骨の中に留まっている状態の場合、萌出してきた時点で抜歯を行うことがほとんどです。

過剰歯は基本的には抜歯になりますが、過剰歯が存在していても特に問題がない場合は、そのまま経過観察として様子を見ることもあります。

前歯の歯並びが気になる、通常には見られない位置に歯が生えているなどが気になる場合は、早めに相談を

過剰歯かどうかはレントゲンで診断できますが、見た目にもわかることがあります。前歯の歯並びや歯の形が気になる、乳歯が抜けたのに永久歯がなかなか生えてこない、おかしなところから歯らしきものが見えるなどは、過剰歯が原因と考えられることがあるため、このようなことが気になった場合は、かかりつけの歯科医院で相談してみて下さい。

萌出遅延、埋伏歯(生え変わりの異常)

乳歯が抜けてもなかなか永久歯が生えてこない場合、顎の骨や歯に何らかの原因があることが考えられます。生え変わりには個人差があり、その幅は広いですが、平均的な歯の生え変わりの時期よりも大幅に歯が生えるのが遅れることを「萌出遅延(ほうしゅつちえん)」、歯ぐきの中に永久歯が埋まったまま生えてこない状態の歯を「埋伏歯(まいふくし)」と言い、生え変わりの異常と診断されます。今回は、萌出遅延と埋伏歯についてお話をいたします。

萌出遅延と埋伏歯について

萌出遅延は、主に上顎の前歯に起こりやすく、特に中切歯(1番目の歯)と犬歯(3番目の歯)によく見られます。これらはとても目立つ場所なので、なかなか歯が生えてこないと心配になることと思います。また学校の歯科検診で指摘され、心配になって歯科医院を受診する場合も多いでしょう。

生え変わりのスピードには個人差があり、その差は2年ぐらいだと考えられています。そのため、生え変わりが遅れていると感じられてもただ単に個人差の範囲内である場合もあります。萌出遅延かどうかのひとつの目安はレントゲン撮影による画像診断です。レントゲン写真では、永久歯がきちんとあるかどうかを見極めるだけでなく、定期的に撮影し過去のレントゲン写真と比較することで、歯の位置や成長の状態を確認することができるため、萌出遅延かどうかを判断する重要な判断材料になります。また、左右の同じ名前の歯の生え変わり時期に半年~1年以上差があるかどうかも、萌出遅延を疑う目安となります。

埋伏歯は、顎の骨の中や歯ぐきの粘膜下に歯が存在しているのに、歯ぐきの外へ生えてこない状態を言います。埋伏歯で多いのは親知らずですが、その他に上顎の中切歯(1番目の歯)や犬歯(3番目の歯)などでも多くみられます。また、歯の半分だけが歯ぐきの外へ生えている「半埋伏(はんまいふく」という状態の歯も埋伏歯の一種です。

原因について

萌出遅延や埋伏歯の原因は様々で、歯だけでなく全身の健康状態によるものも考えられます。

・遺伝性歯牙形成不全、骨系統疾患、くる病など栄養障害などの全身疾患が原因の場合

・歯胚の位置や方向の異常、スペース不足、過剰歯の存在、癒合歯、乳歯の早期損失などが原因の場合

萌出遅延や埋伏歯を放置することによるリスクとは?

乳歯が抜けたけどなかなか永久歯が生えてこない、乳歯が全然抜ける気配がないなど、萌出遅延や埋伏歯が考えられるにもかかわらず、そのまま放置するとどのようなリスクがあるのでしょうか。

  • 歯並びを悪くする

乳歯が抜けたにもかかわらず、なかなか永久歯が生えてこない場合、隣の歯がだんだん傾斜してきたり、咬みあう相手になる歯が伸びてくるため、永久歯の生えてくるスペースが狭くなります。その結果歯並びが崩れてしまいます。

  • 埋まっている歯と顎の骨が癒着する可能性が高まる

長い間歯が顎の骨の中に埋まっている状態が続くと、埋まっている歯と骨が癒着してしまう(くっついてしまう)リスクが高まります。これを「骨性癒着(こつせいゆちゃく)」と言い、歯を引っ張り出すことが難しくなり、抜歯の対象となります。

  • 埋伏歯が他の歯や顎の骨に悪影響を与える

埋伏歯の歯冠が他の歯の歯根にぶつかるような位置にあるときに、歯根吸収を引き起こす場合があります。歯根吸収が進行すると、最悪の場合その歯は抜歯となることもあります。また、埋伏歯が「含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)」という嚢胞をつくる場合もあり、嚢胞が大きくなると周りの歯を押して歯の位置がおかしくなったり、嚢胞により顎の骨が大きく吸収されることもあります。

永久歯がなかなか生えてこない状態が続いたら、早めに歯科医院に相談しましょう

歯の生え変わりは個人差が大きいため、不安に感じることも多いと思います。ただ単に遅いだけなら心配いりませんが、萌出遅延や埋伏歯がある場合、歯並びや歯の健康に大きく影響してしまいます。お子さんの永久歯がなかなか生えない場合は、早めにかかりつけの歯科医院に相談してみて下さい。

空隙歯列

歯と歯の間にすき間が目立つことはありませんか?いわゆる「すきっ歯」と呼ばれる歯並びは、見た目が気になることと思います。では歯と歯の間にすき間がある歯並びは、見た目以外にどんな問題点があるのでしょうか。

歯と歯の間にすき間がある「空隙歯列」について

いわゆる「すきっ歯」と言われる歯と歯の間にすき間がある歯並びは専門的には「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼ばれる不正咬合の一種です。前歯の間だけすき間があるケースもありますが、空隙歯列は顎が大きく、それに対し歯が小さいことで起こる不正咬合です。また、歯が並ぶためのスペースが広く余っている状態とも言えます。顎が小さく、永久歯が並ぶスペースが足らないと歯と歯が重なって歯並びがガタガタになりますが、空隙歯列は顎が大きく歯が小さいため、正しく並んでもすき間ができてしまうのです。

空隙歯列の原因

では歯と歯の間にすき間ができるのは何が原因ででしょうか。

  • 顎が大きい・・・上でも述べたように、顎が通常よりも大きいことでスペースが余り、歯と歯の間にすき間ができてしまいます。
  • 歯が小さい・・・顎の大きさに対して歯が小さい場合も、歯並びにすき間ができる大きな要因となります。
  • 舌が大きい・・・舌が大きいことも、歯と歯にすき間が生じてしまいます。通常舌は歯の内側に収まっていますが、舌が大きすぎると歯や顎の骨を押してしまって歯を外側へ動かしてしまうことも考えられます。
  • 歯の本数が少ない・・・通常、成人の歯は親知らずを抜いて数えると上下合わせて28本です。ところが何らかの原因で歯が足りない先天性欠損の場合、欠損している歯の分のスペースが余ってしまいます。そのためすき間が生じてすきっ歯となってしまうことがあります。また歯の本数は足りていても骨の中に埋まったまま生えてこないためすき間ができるケースもあります。

空隙歯列の問題点

すきっ歯の大きな問題点は、まず見た目です。空隙歯列の方は、すきっ歯だから恥ずかしい、マスクが手放せないなど審美的なコンプレックスを抱えていることがありますが、機能面に関しても問題が生じてきます。では次に、審美面以外のすきっ歯の問題点を挙げてみましょう。

  • 咀嚼に問題がある・・・食べ物が噛み切りにくいといった、咀嚼に問題が生じます。しっかり咀嚼できないと、胃腸にも負担がかかりやすくなります。
  • 発音が不明瞭になる・・・歯と歯のすき間から空気が漏れて、発音が不明瞭になってしまいます。
  • 顎の関節に負担がかかりやすい・・・一見すると噛み合わせに問題がないよう思えるかもしれませんが、噛み合わせにズレがある場合が多く、顎の関節に負担をかけてしまうことがあります。最悪の場合、顎関節症を引き起こしてしまう可能性も否定できません。

このように、歯と歯のすき間は審美的な問題だけでなく、機能面にも影響が出てしまいます。このすき間は矯正治療をすることで改善が可能ですが、場合によっては矯正以外の歯科治療が必要になる場合もあります。ただのすき間、と片付けずに、いちど歯科医院を受診することをお勧めします。

交叉咬合

歯は本来、上の歯が下の歯を少し覆った状態で生え揃っています。しかし、下の歯列が上の歯列よりも外側に出ている、あるいは臼歯部が横にずれて噛み合っており、上下の前歯の中心がずれている状態を交叉咬合(こうさこうごう)と言い、不正咬合の一種と診断されます。

交叉咬合の原因

交叉咬合はクロスバイトとも呼ばれており、幼少期の歯並びでも起きることがあります。

交叉咬合は顎や噛み合わせがずれてしまっているため、噛み合わせだけでなく、顔の歪みが多く見られます。つまり正面から見たとき、顔の非対称具合が目立ってしまいます。

交叉咬合の原因は、他の不正咬合と同じく、上顎と下顎の大きさのアンバランスにより起こる先天性のものと、頬杖や横向きで寝るなどの癖による後天的なものが考えられますが、幼少期の頃は骨格的にずれているよりも、上顎の歯列の狭さや噛み合わせのズレが原因で、奥歯の噛み合わせが横にずれていることがほとんどです。

しかし中学生くらいになると、口元にズレが生じていることが顕著になり、見た目にも問題が出てきます。特に思春期ごろの女子の場合、見た目が大変気になってしまうことと思います。また奥歯の噛み合わせが大きくズレることで顎に負担がかかり、顎関節症になる恐れもあります。

交叉咬合をそのままにしておくことで生じる問題点とは

交叉咬合の大きな問題点は、噛み合わせのズレと見た目です。噛み合わせが横に大きくズレていると口元が大きく歪み、顔全体のバランスが悪くなります。

また噛み合わせのズレにより、顎の骨に負担がかかりやすく、口が開きにくい、顎が痛いなど顎関節症を引き起こしてしまうこともあります。

矯正治療だけでなく、外科処置が必要になることも

交叉咬合の治療の多くは、狭い歯列の拡大を行います。拡大装置を装着して歯列を横に広げることで改善を促しますが、状況によっては成人後を機に、外科手術を行ったうえで矯正治療が必要となる場合もあります。この場合、保険が適用となるケースも考えられるので、歯科医師によく確認して下さい。

交叉咬合かどうかのチェックポイント

不正咬合には色々ありますが、交叉咬合は案外見つけにくいかもしれません。交叉咬合と気付かずにそのまま過ごしていると、成長に伴って口元の歪みが顕著になってしまう恐れがあります。そこで交叉咬合かどうかのチェックポイントをご紹介しましょう。

・上下の前歯の中心は合っていますか?

・奥歯や横の歯の噛み合わせが上下逆になって下の歯が外側に出ていませんか?

このような症状が当てはまる場合、交叉咬合が疑われます。もしかして交叉咬合かも?と思われる方は、速やかに矯正歯科を受診しましょう。

過蓋咬合

奥歯で噛んだ時、通常は上の前歯が下の前歯を2~3mmほど覆います。ところが上の前歯が下の前歯をすっぽりと覆い隠して、下の前歯がほとんど見えない状態の噛み合わせを「過蓋咬合(かがいこうごう)」と言います。では過蓋咬合の問題点や、放置した場合どのようなリスクを負うのか、詳しくご説明しましょう。

「噛み合わせが深い」過蓋咬合の問題点とは?

過蓋咬合は、奥歯で噛んだ時に上の前歯が下の前歯をほぼすっぽりと覆った状態になります。一見すると歯がきれいに並んでいることもあるため、出っ歯や受け口に比べるとさほど気にならないかもしれませんが、そのまま放置しておくことで、お口の中に次のような問題点が生じてきます。

  • 下の歯がすり減る・・・上の歯が下の歯を覆い過ぎて深い噛み合わせになるため、下の歯列がすり減ってしまいます。歯の先端がすり減り過ぎると象牙質が見えてしまう「咬耗症」になる恐れがあります。
  • 顎が動きづらくなる・・・上下の歯が接触しすぎており、下顎の自由な動きを妨げてしまいます。
  • 出っ歯を誘発する・・・噛みこみが深いことで下の歯が上の歯に強く接触し続けると、上の前歯が外側へ傾斜し、出っ歯の原因となります。
  • 奥歯の被せ物が外れやすくなる・・・過蓋咬合は奥歯にかかる負担が大きくなる噛み合わせです。そのため奥歯に被せ物が入っている場合、外れたり破損する原因となります。

過蓋咬合の原因

過蓋咬合になる原因は、遺伝要素や歯の異常などが考えられます。先天的な要因としては、下顎の成長が足りない、上顎の成長が大きいなど、上下の顎のバランスが悪いことや、奥歯の高さが足りない場合などが挙げられます。

いっぽう後天的な要因として、奥歯が抜けたまま放置しておくことで噛み合わせが低くなる、強い噛みしめ、下唇を噛む癖などが過蓋咬合を引き起こす可能性があります。

過蓋咬合を放置するリスク

過蓋咬合は、歯列矯正をすることで深すぎる噛み合わせを浅くすることが可能です。しかしそのまま放置すると、下顎に負担がかかりすぎて顎が動かしにくくなることがあります。その結果顎がカクカク言う、口が開けにくい、顎が痛いなど、顎関節症を引き起こすことがあります。

また咀嚼しにくい、笑った時に歯ぐきがむき出しになってしまうなどの機能的・審美的な問題も起こります。

年を重ねるごとに噛み合わせは少しずつ深くなるため、過蓋咬合をそのままにしておくとますます症状が悪化してしまいます。笑った時に下の歯がほとんど見えない場合、過蓋咬合が疑われますので気になる方は早めに歯科医院へお越しください。

 

 

開咬

不正咬合のひとつに「開咬(かいこう)」というものがあります。開咬はオープンバイトとも呼ばれており、奥歯で噛んだ時に上下の歯にすき間ができる噛み合わせです。今回は開咬の特徴や、放置した場合のリスクなどについてご説明いたします。

 

開咬とは?

開咬とは、奥歯で噛んだ時に歯が噛み合わず、上下の歯の間にすき間ができてしまう状態を言います。正しい噛み合わせは奥歯で噛んだ時に、上の歯が下の歯を数mm覆っていますが、前歯部開咬になると上の前歯が下の前歯を全く覆いません。開咬は歯並びそのものは悪くないケースもあり、正面から見ると問題がないように見えることもあるかもしれません。しかし開咬の程度によっては正面から見てもわかる場合もあります。また、上下の前歯に間があいていると、前歯で食べ物を噛み切ることができないため、食事において不便を感じることもあります。

開咬の原因

では開咬はどのようなことが原因で起こるのでしょうか。

  • 幼いころの指しゃぶりや舌を使った癖などを長期間行うことで少しずつ歯が移動したことによるもの
  • 骨格的な問題によるもの
  • 鼻炎やアデノイド、扁桃腺肥大などの呼吸器系疾患があり、口呼吸が行われることによるもの。(口呼吸を長期間続けているとお口の中の筋肉のバランスが崩れてしまうため、開咬に繋がることがあります。)

開咬による問題点とは

出っ歯や受け口に比べると、見た目はそれほど問題はないかもしれません。しかし開咬は見た目以上に機能に大きな問題を抱える不正咬合です。では開咬を放置することで、どのような問題が起こるのでしょうか。

・前歯で食べ物を噛み切れない・・・食材によっては、前歯で噛み切る必要があるものも多数あります。ところが開咬は前歯にすき間があるため前歯で噛み切ることができません。そのため食べられるものが前歯を使わない食材に限定されてしまう場合があります。

・奥歯に過度の負担がかかる・・・開咬の大きな問題点のひとつに、奥歯に大きな負担がかかることがあります。そのため長期的にみると奥歯の詰め物や被せ物が外れやすくなったり、歯にヒビが入ったり、歯が割れてしまう恐れがあります。

・発音が不明瞭になる・・・上下の前歯の間にすき間があることで空気が漏れたような発音になってしまいます。そのため発音が不明瞭になり、相手にとって聞きづらくなることがあります。

・口が閉じにくく、口腔内が乾燥しやすくなる・・・お口の中が乾くと唾液が少なくなり、細菌が増えて虫歯や歯周病、口臭の原因となります。

 

このように、開咬を放置しておくことで様々な問題を抱えてしまいます。開咬かも?と思われる方、検診などで開咬を指摘された方などは、できるだけ早めに歯科医院へ相談して下さい。

 

ページトップへ