マウスピース型矯正装置(インビザライン)

マウスピース型矯正装置(インビザライン)

数ある矯正治療の中に、透明なマウスピースをはめて歯並びを整える方法があります。今回は、マウスピース型矯正装置のひとつである「インビザライン」についてご紹介します。

マウスピース型矯正装置「インビザライン」とは?

従来の矯正治療では、歯にブラケットとワイヤーを装着して歯を動かし、歯並びを整えますが、マウスピース矯正とは、マウスピースを交換しながら歯並びを治していく治療法です。マウスピース矯正にはいくつかの種類がありますが、最近ではアメリカが発症の地である「インビザライン」というマウスピース矯正が主流となっています。

インビザラインとは、米アライン・テクノロジー社が作製するマウスピース型矯正装置のことで、80を超える諸外国で導入されていると言われています。日本でもインビザラインを取り入れている歯科医院が増えてきています。

インビザラインのメリット

インビサラインに限らず、マウスピース矯正全体に言えるメリットは、「透明で目立たないこと」「取り外し式で食事や歯磨きに困らないこと」です。これに加えてインビザラインでの大きなメリットは、「歯型取りが一度で済むこと」そして「クリンチェックという独自のソフトを使って歯の動きをシュミレーションし、最終的な歯並びが目で確認できること」です。この二つの特徴は他のマウスピース矯正にはなく、インビザライン独自のメリットと言えます。

アライナーと呼ばれるインビザラインのマウスピースを作製するために歯型を取りますが、一般的な印象材を使うのではなく、光学スキャンを使って歯型を取ります。そのため吐き気を感じることもほとんどありません。採取したデータは米国アライン社に送られ、アライナーが数十枚作製されます。患者さんは「こんなに多くのアライナーがいちどに送られて。本当に歯並びが改善されるの?」とびっくりするかもしれませんが、これには理由があります。

と言うのも、アライン社独自の「クリンチェック」というソフトウェアを使って歯の動きシュミレーションし、計画した歯の動きに合わせて全てのアライナーを作製するためです。クリンチェックでは患者さんも一緒にモニターで歯の動きを確認し、最終的な歯並びを目で確認することができるため、矯正治療に対するモチベーションを保つことにも効果があります。

このように、インビサラインは他のマウスピース矯正にはない独自のシステムがあり、このことが大きなメリットであると言えます。

インビザラインのデメリット

では逆にインビザラインのデメリットはどこにあるのでしょうか。それは、全ての症例に対応できないかもしれないということです。抜歯を伴うケースや難症例と診断されたケースでは、インビザラインでは対応できないこともあり、この場合はワイヤー矯正となってしまいます。中には難症例でもインビザラインで対応できることもありますが、高度な技術と見識を持った歯科医師でないと難しいことがあります。

インビサラインでの治療を検討している場合、歯科医院選びが重要

インビザラインは他のマウスピース矯正にはない優れた特徴を持つ治療法です。インビザラインでの矯正治療を考えている方は、歯科医院選びがポイントになります。インビザラインでの症例が多い歯科医院や認定医や専門医の資格をもった歯科医師がいる歯科医院を選ぶことが、スムーズな治療に繋がるでしょう。

白いワイヤー矯正

矯正治療おいて最もオーソドックスなワイヤー矯正は、お口を開けたときにすごく目立ってしまうため、矯正治療を躊躇する方もいらっしゃるでしょう。今回は金属色ではなく、白いワイヤーを使った目立ちにくい矯正治療をご紹介します。

目立たないワイヤー矯正とは?

ブラケットとワイヤーを使ったワイヤー矯正は、ほぼ全ての症例に対して効果を発揮し、開咬など難しいケースなどにも幅広く対応することができる治療法です。

しかしワイヤー矯正は装置が金属でできているメタルブラケットおよびメタルワイヤーが標準となるため、お口を開けたときに大変目立ってしまいます。そのため歯並びを治したくても矯正治療をしたくない、という声もよく聞かれます。

白いワイヤーを使った矯正治療について

「周りに目立つことなく矯正治療がしたい」。このようにお考えの方が思い浮かぶのは、透明なマウスピース矯正かもしれません。確かにマウスピース矯正は目立たず歯並びを整えることができることから人気を集めています。しかし、マウスピース矯正はワイヤー矯正より適用範囲が狭く、症例によってはマウスピースで治すことが難しい場合もあります。そこでご紹介するのが、白く目立たないワイヤー(ホワイトワイヤー)を使った矯正治療です。最近では審美面を考慮し、白や透明のブラケットやワイヤーを使ったワイヤー矯正が増えています。ホワイトワイヤーは、メタルワイヤーに白いコーティングをしているため、従来の装置のように目立つことはなくなります。

ホワイトワイヤーの長所

ホワイトワイヤーの長所は、なんといっても目立たずに矯正治療ができるところです。ホワイトワイヤーは近くで見てもほとんど目立たず、周囲から矯正治療を行っていることがほとんどわかりません。メタルブラケットとメタルワイヤーによる矯正治療のデメリットがそのままメリットになると言っても良いでしょう。また汚れにくい素材のため、着色の心配もほとんどありません。

ホワイトワイヤーの短所

ホワイトワイヤーのデメリットは、メタルブラケットおよびメタルワイヤーと比べると費用が高くなることです。またホワイトワイヤーはワイヤー自体が白いわけではなく、メタルワイヤーを白くコーティングしたものです。そのため歯磨きや強い摩擦、刺激によりコーティングが剥げてしまうことがあります。透明なマウスピースと比べると、やや装置が目立ってしまうため、どちらかといえば「目立ちにくい」装置だと言うべきかもしれません。

そして従来のワイヤー矯正と同じく、歯磨きがし辛いため虫歯などになりやすいこともデメリットのひとつです。

従来の装置に躊躇している方へ

メタルブラケットは確かに装置が目立ってしまうため、躊躇してしまうのも無理はありません。しかしご紹介した目立ちにくいホワイトワイヤーを使ったワイヤー矯正ならそのような悩みを軽減することができます。特に接客業や人前に出る方、矯正装置が目立つことが嫌な方は、いちど相談してみて下さい。

ワイヤー矯正装置

矯正治療には色々な治療法があります。今回は、矯正治療の中でも最もオーソドックスな治療法であるワイヤー矯正をご紹介します。

ワイヤー矯正について

ワイヤー矯正とは、歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな器具を取り付け、そこへワイヤーを通して歯を少しずつ動かしながら歯並びを整える治療法です。矯正治療と言えば、歯にギラギラした装置が付いているのを思い浮かべる方がほとんどだと思います。それほどワイヤー矯正は昔から行われている、最もオーソドックスな治療法です。

ワイヤー矯正では歯の表面にブラケットを付けてワイヤーを通し、ワイヤーの特性を利用して歯に力を加えながら歯を少しずつ動かします。1カ月に一度の来院時にワイヤーの形や太さ、素材などを調整しながら歯の動きを微調整していきます。

なおガタガタの歯並びの方が初めて矯正装置を付けたときは、ワイヤーも曲がった状態です。これは歯に合わせてブラケットを付け、そこにワイヤーを通しているためです。歯が動いてくると次第にワイヤーも真っすぐになってくるため、最初に「ワイヤーがこんなに曲がってても大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、心配ありません。

ワイヤー矯正の治療期間は、上下にブラケットとワイヤーを装着した場合、およそ1~3年程度です。

ワイヤー矯正の長所

ワイヤー矯正の長所は、あらゆる症例に対応できることです。歯並びの乱れはもちろん、マウスピース矯正では治すのが難しいような症例でも、ワイヤー矯正なら対応が可能です。特に開咬など難しい症例でも、ワイヤー矯正できちんと治すことができます。ほぼ全ての症例において効果を発揮する治療法だと言えます。

また抜歯を伴うケースも、マウスピース矯正よりもワイヤー矯正のほうが適用範囲が広いため、抜歯が必要な場合、ワイヤー矯正が選択肢となることが多いです。

ワイヤー矯正の短所

あらゆる症例に対応できるワイヤー矯正ですが、装置が金属のため非常に目立ってしまうことが大きな短所です。このため矯正治療を躊躇する方も少なくありません。特に接客業など人前に出る仕事をしている方にとっては大きなデメリットとなります。

またワイヤーが通っているため歯磨きがし辛く、汚れが残って虫歯や歯肉炎などが起きやすくなることも短所のひとつです。ワイヤー矯正は固定式のため、どうしても装置周りに汚れが付きやすくなってしまいます。そのためマウスピース矯正よりも虫歯リスクが高くなってしまいます。装置が唇や歯ぐきに当たって口内炎になることもしばしばあります。

ワイヤー矯正の特徴を理解しておきましょう

成人や永久歯が生えそろった方の矯正治療では、ワイヤー矯正が第一選択肢となることがほとんどです。また抜歯を伴うケースやマウスピース矯正では治療が難しい場合も、ワイヤー矯正で治療を進めていくことになります。最もオーソドックスな治療法ですが、デメリットも存在するためワイヤー矯正の特徴をよく理解しておくことがスムーズに治療を進めていくためのポイントとなるでしょう。

矯正治療中はどのくらいの間隔で通院するの?

歯並びを整えるための矯正治療では、矯正治療中に通院が必要となります。通院間隔は個人差、歯科医師の方針、矯正治療法などによって違いがあります。では矯正治療中はだいたいどのくらいの間隔で通院すればよいのでしょうか。

矯正治療中の通院の目的とは?

矯正装置を歯に装着した後は、定期的に通院します。ではなぜ矯正治療中は定期的な通院が必要なのでしょうか。まずは通院の目的をご紹介しましょう。

・歯が順調に動いているかの確認

・装置の調整

・虫歯や歯肉炎、歯周炎になっていないかの確認

・装置が破損していないかの確認

・マウスピース矯正の場合、マウスピースの交換

・その他相談事など

矯正治療中の通院の一番大きな目的は、歯が順調に動いているかどうかを確認することです。矯正装置を付けると力が加わり、歯が引っ張られる/押されることで少しずつ動きます。一か月間での歯の動きはわずかですが、もし歯の動きがあまりなければ何らかの原因が考えられ、対処しなければいけません。通院ではまず歯の動きをきちんとチェックします。またワイヤーの調整や新しいマウスピースの交換を行い、装置の破損がないかどうかも確認します。そして矯正治療中は虫歯や歯周病リスクが高くなるため、お口の中に異常がないかどうかも確認します。

矯正治療の通院間隔について

では矯正治療中はどのくらいの頻度で通院するのでしょうか。矯正治療は患者さんのお口の中の状態により異なるため、通院頻度は多少異なりますが、一般的には次のとおりになります。

・ワイヤー矯正(成人または全て永久歯が生えそろっている場合)・・・およそ1か月に一回程度

・マウスピース矯正・・・およそ1か月に一回程度。場合によっては通院間隔が伸びることもある。

・小児矯正(Ⅰ期治療)・・・1~2か月に一度。装置の使用状況によっては、通院頻度が変わることもある。

・保定期間・・・矯正治療終了後の保定期間の場合、だいたい3~6か月に一度。

患者さんのスケジュールに合わせることも

矯正治療は虫歯などと違い、緊急性がありません。そのためついつい通院を忘れてしまう、仕事が忙しくてなかなか通院の時間が取れない、学校の部活や試合などで忙しい・・・このような事情で思うように通院ができないことも考えられます。しかし矯正治療は装置を付けてハイ終わり、ではありません。きちんと歯が動いていることを確認するためにも、定期的な通院はとても大切です。ご紹介した通院間隔はあくまでも目安であり、患者さんの事情により多少前後することもあります。事前に歯科医院に相談することで通院期間を調整してくれることもあります。

定期的な通院をきちんと続けることが、治療を早く終わらせるための近道です。

キレイな歯並びを手に入れるためにも、定期的な受診を欠かさないようにしましょう。

 

矯正治療の期間はどれくらい?

矯正治療は、虫歯など一般治療と異なり、治療期間が長くなります。また歯の動き方には個人差があり、どのくらいの期間で歯並びが改善されるかは、患者さんによって違いが出てきます。今回は、矯正治療の治療期間についてお話をいたします。

歯並びや治療法によって矯正期間は変わる

歯並びや噛み合わせの不具合により矯正治療が必要と判断された場合、費用とともに気になるのが、矯正治療における治療期間ではないでしょうか。歯並びの乱れや不正咬合の度合いは患者さんによって大きく異なり、治療期間がどのくらいかかるのかは断言できません。また治療法によっても治療期間は異なります。それぞれ治療法でのだいたいの治療期間の目安についてご紹介します。

・ワイヤー矯正・・・最もオーソドックスな治療法で、歯にブラケットを取り付け、そこにワイヤーを通して少しずつ歯を動かします。全て永久歯列である場合、歯並びの度合いにもよりますが、治療期間はおよそ2~3年です。

・裏側(舌側)矯正・・・歯の裏側に矯正装置を装着して歯を動かす裏側矯正は目立たず歯並びを整えることができます。裏側矯正の場合、高い技術が必要であるとともに、治療期間も平均3年と長くなる傾向にあります。

・マウスピース型矯正装置による矯正・・・インビザラインなどのマウスピース型矯正装置による治療期間はおよそ1~2年ほどが目安と考えられます。難しい症例の場合はもう少し治療期間が長くなるか、ワイヤー矯正など別の治療法になることがあります。

・部分矯正・・・主に前歯など気になる部分だけを治す部分矯正は、全体矯正と比べて治療期間が短く、半年~1年くらいが目安となります。部分矯正で治療できる症例は限られているため、ご自身の歯並びが部分矯正で改善できるかどうか、歯科医師としっかり相談することが大切です。

また矯正治療中に虫歯治療や歯周病治療が必要となった場合、治療期間が少し長くなります。

矯正治療後に行う保定期間について

歯並びや噛み合わせがきちんと整い、矯正装置を外すと長かった矯正治療が終了します。しかし。その後は後戻りを防止するための「保定期間」が必要となります。リテーナーという装置を取り付けることで、きれいに整った歯並びを固定します。中には保定期間が面倒だという人もいますが、きれいに整った歯並びが後戻りしてしまうと元も子もありません。保定期間はおよそ2~5年、通院はだいた3~6か月に一度、後戻りがないかどうかをチェックします。

矯正治療期間は歯並びの度合いや治療法で変わってきます。ほとんどの歯科医院で矯正治療前にカウンセリングが行われるため、おおよその治療期間を確認しておきましょう。

 

 

矯正治療の医療費控除

矯正治療は自費治療のため、高額な治療費が必要になります。そこでご紹介したいのが、矯正治療における「医療費控除」です。矯正治療はしたいけど高いから・・・と躊躇されている方は是非参考にしてみてください。

医療費控除について

医療費控除とは、一年間で病気や出産などで多くの医療費を支払った場合、医療費控除によって納めた税金の一部が返ってくる制度を言います。高額な治療費を支払った場合、確定申告を行いますが、支払った医療費の金額に応じて税金を計算されます。歯科治療においても医療費控除の対象となるものがあるため、医療費控除の制度を利用して治療費を抑えることができます。

一年間の医療費の合計が10万円を超えると、医療費控除を受けることができます。医療費控除の対象となるものは色々あるため、医療費控除が受けられるかどうか確認してみましょう。そのためには領収書をきちんと取っておいてください。

また医療機関にかかった交通費のうち、電車やバスといった公共交通機関の交通費も医療費控除の対象となります。しかしマイカーやガソリン代は対象となりません。矯正治療のため遠方へ通院している方は、公共交通機関の領収書を忘れずに取っておきましょう。

矯正治療における医療費控除が適用となるケースとは?

審美目的の治療では、医療費控除にはなりません。例えばホワイトニングは白く美しい歯にする審美目的の施術で、医療費控除の対象にはなりません。では矯正治療はどうでしょうか。歯並びをきれいに整えるという意味で、審美目的では?と思われる方がほとんどだと思いますが、矯正治療では以下のケースにおいて、医療費控除が認められます。

・子どもの矯正治療・・・子どもの矯正治療の場合、医療費控除の対象になります。その理由は、発育段階において歯並びや噛み合わせの異常があると、その後の歯や顎の成長に影響が出てしまう恐れがあるためです。

・咀嚼障害や発音障害など歯の機能障害として認められる場合・・・成人では、咀嚼や発音に問題があった場合に医療費控除が認められます。歯の機能が問題となり、しっかり噛めない、発音が不明瞭などという場合「咀嚼障害」や「発音障害」というような診断名が付けられます。このような病名が付いた場合、医療費控除の対象になります。

矯正治療はお子さんの場合は医療費控除の対象となりますが、成人の場合は全てが対象になるとは限りません。成人の方で、自分は控除の対象になるのかどうか確認してみることをお勧めします。

 

 

矯正治療に保険が適用できるケース

矯正治療は通常は自費治療であり、保険が適用となるケースはかなり限られています。では矯正治療で保険が適用となるのはどのような場合なのでしょうか。

矯正治療で保険が適用となるケースとは?

歯並びが悪い、出っ歯が気になるなど、歯並びの問題はまずその見た目に原因があると思います。これは審美性の問題であり、見た目を改善することを目的とした治療は保険適用できません。同じような意味で、ホワイトニングやインプラントも審美性を重視するため保険適用外となります。そんな中、矯正治療では下記のケースに限り、保険が適用されることがあります。

・顎変形症

顎変形症とは、上顎や下顎の大きさや形に異常があり、上顎と下顎の大きさのバランスが悪いことで噛み合わせに異常が起こる不正咬合、顔面の変形があることを言います。顎変形症かどうかは、矯正歯科(顎口腔機診断料が算定可能な施設)や口腔外科、形成外科で診断されます。成人の場合、顎変形症は通常の矯正治療では改善できないことが多く、外科処置が必要となります。出っ歯や受け口などの不正咬合が顎変形症に起因していると診断され、外科手術の適応と判断された場合に、保険適用となります。

・唇顎口蓋裂などの疾患に起因する咬合異常

厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療の場合、保険適用で矯正治療を受けることができます。主な疾患として、唇顎口蓋裂・ダウン症候群・6歯以上の先天性部分(性)無歯症など、現在53の先天疾患が定められています。

・前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするもの)

 

保険適用される矯正治療を行うことができる保険医療機関のリストは、日本矯正歯科学会のホームページに掲載されています(http://www.jos.gr.jp/facility/)。

 

顎変形症に伴う保険適用で必要な治療について

出っ歯や受け口は保険適用外治療になることが多いですが、もしその原因が顎変形症によるものと診断された場合、保険適用で治療を受けることができます。しかし保険適用となる条件には、顎の外科手術が必要であること、指定の医療機関または施設で治療を受けることが定められています。今度は顎変形症に伴う保険適用治療のプロセスをご紹介します。

1.外科手術前に行う矯正治療・・・顎の骨の外科手術を受ける前に、矯正歯科で歯列矯正を受けます。通院期間は半年~1年ほどです。

2.顎の骨の手術および入院・・・保険適用には顎の骨の手術が必要不可欠です。決められた日に顎の骨の手術を行います。また日帰りはできず、1週間から4週間程度の入院期間が必要です。

3.退院後の矯正治療・・・顎の骨の手術に伴う入院期間が終わったあとは、再び歯列矯正を行います。治療期間は症例により異なりますが、およそ半年~1年ほどが多いようです。

4.保定期間・・・歯列矯正で整えた歯並びが後戻りしないよう、一般の歯列矯正と同じように保定期間に入ります。

 

自分の症例が顎変形症によるものかどうかは歯科医師に確認を

保険適用で矯正治療を受けることができるケースについてお話しました。もし歯並びの悪さや不正咬合の原因が顎の骨の変形と診断された場合、保険適用で治療することができます。金額的にも保険と自費では大きく異なりますが、外科手術が不安と感じるかもしれません。しかし、歯並びを整えることで得られるメリットは非常に多いため、歯並びの悪さや不正咬合にお悩みの方は、いちど歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。

矯正治療の費用はどのぐらいかかる?

矯正治療の心配事といえば、費用面ではないでしょうか。矯正治療はほとんどのケースにおいて自費治療となるため、治療費が高くなってしまいます。矯正治療には色々な方法がありますが、治療法によっても金額が変わってきます。では矯正治療ではどのくらいの費用が必要なのでしょうか。

矯正治療に必要な費用とは?

矯正治療にかかる費用は、装置代だけではありません。矯正治療を開始するにあたり、それぞれ費用が発生します。その費用の内訳は主に以下に挙げるものになります。

・相談料(無料~約5,000円)・・・初めて矯正治療を受けるときに必要な費用です。歯科医院によってはこの相談料が無料のところもあります。

・検査料(約30,000~50,000円)・・・検査とは、お口の中の状態を詳細に把握するもので、口腔内の診察、レントゲン撮影、口腔内写真の撮影、歯型取りなどを行います。この検査は骨格や歯の状態を把握するために欠かせない検査です。もしこの時に虫歯や歯周病などが見つかった場合、矯正治療を開始する前にこちらの治療を済ませておく必要があります。

・診断料および装置料(成人の場合:約600,000~1,000,000円程度)・・・診断料とは、検査結果により矯正治療が必要かどうか、抜歯の必要性の有無そして矯正方法などを診断するための費用です。装置料は、小さなお子さんと成人では矯正方法も異なるため、費用が大きく異なることが多いです。また、裏側(舌側)矯正の場合、他の矯正治療よりも高くなります。

お子さんの場合、第一期治療と第二期治療に分かれます。第一期治療は顎の成長を促すための矯正治療で、費用は20万程度のところが多いようです。引き続き第二期治療に移行した場合、別途料金が必要となります。

・調整料(約3,000~5,000円)・・・矯正治療が始まると、およそ月一回の診察があります。歯が順調に動いているかどうか、虫歯はないかなど口腔内の確認のほかワイヤーの調整、マウスピースの交換といったことが行われます。

なお虫歯や歯周病、歯のクリーニングおよび矯正治療に関連した口腔ケアグッズ購入などは別途料金が必要になります。

歯科医院によっては相談料、検査料、調整料などが最初のお支払いに全て含まれていることもあります。矯正代金に何が含まれているのか、よく確認しましょう。

支配総額をよく確認しておきましょう

矯正治療はトータルの費用が高くなるため、支払いに不安を感じてしまうかもしれません。まずは支払総額がどのくらいかかるかをよく確認しましょう。歯科医院によってはデンタルローンやクレジットカードでの支払いが可能なところもあります。支払方法も含め、費用は明確にしておくことが大切です。

 

 

 

矯正治療で抜歯する?しない?

矯正治療が必要と判断された場合に思い浮かぶのは「抜歯をしなければいけない」ではないでしょうか。矯正治療の多くは抜歯を必要としますが、全てのケースにおいて抜歯が必要なのでしょうか。今回は、矯正治療における抜歯の有無について考えてみたいと思います。

歯を残すことは、体の健康を維持することに深く繋がる

「8020運動」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、80歳になったときに自分の歯を20本残残しましょう、という厚労省と日本歯科医師会が推進している運動です。80歳で20本の歯があれば、しっかり噛んで食事を楽しむことができるため、健康長寿にも深く関わっていると言えます。

しかし矯正治療では、健康な歯を抜歯しなければいけないケースが多く、健康な歯を抜くことで将来的に残存歯に影響してしまう可能性は否定できません。できるだけ健康な歯を残すことで体の健康を維持することが推進されているのにもかかわらず、矯正治療では健康な歯を抜歯しなければならないことがあるのはある意味矛盾していると考えられるかもしれません。

矯正治療で抜歯が必要となるケースとは?

では矯正治療で抜歯が必要となるのは、どのようなケースでしょうか。

・歯の大きさに対して顎の骨が小さいケース・・・顎の骨が小さい場合、永久歯の歯列が正しい場所に並ばずに飛び出してしまう、重なり合ってしまうなどガタガタの歯並びになってしまいます。このようなケースの多くは小臼歯を抜歯して矯正治療を行います。

・前歯が前に出ているケース・・・前歯が前に出ている、前歯が前に傾斜している、横顔を見たときに口元が前に出ている、前歯が出ていて口が閉じにくいなどの場合にも、小臼歯を抜歯して矯正治療を行うことがあります。

・親知らずがあるケース・・・親知らずは必ず抜かなければいけないことはありません。親知らずが上下4本とも生えていても噛み合わせに問題がなく歯列が整っていれば、そのままにしておくことがほとんどです。しかし親知らずがあることで歯列の乱れや噛み合わせに異常がある場合、親知らずを抜歯します。

・その他の異常があるケース・・・過剰歯(通常より歯の本数が多い)、埋伏歯(歯が骨に埋まっている)で萌出させることが困難な場合、大きい虫歯・歯根の露出・歯根の吸収があるなど歯の保存が難しい場合では抜歯となることがあります。

抜歯をせずに矯正治療ができるケースとは?

軽度のガタガタやもともと歯並びに隙間がある場合、矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療など、症例によっては非抜歯で歯並びを改善することができるケースも少なくありません。非抜歯で矯正治療を進めるにあたり、歯を少し削って歯が動くスペースを確保したり、上下の歯の大きさのバランスを整えたりする場合もあります。

歯列矯正によって歯並びを整えることは、虫歯や歯周病を予防し、歯の健康を維持することに繋がります。しかし矯正治療のために抜歯することで、将来的な歯の寿命に影響してしまうことも考えられます。一方で、明らかに抜歯の必要があるケースで抜歯せずに無理に矯正治療を行ってしまうと、上下の歯が上手くかみ合わなくなったり、口が閉じにくくなったり、歯や歯の周囲の組織にダメージを与えたりする場合もあります。

抜歯か非抜歯か、どちらの方法で矯正治療を進めていくのか、またその際に生じるリスクなどもよく理解するために、担当の歯科医師とよく相談しましょう。

どんな歯並びだと治療が必要?

歯並びや噛み合わせが何となく気になっても、矯正治療が必要なのかどうか、これくらいは大丈夫なのか、ご自身では判断がつかないこともあると思います。矯正治療が必要なケースなのに、そのままにしておくことで様々なリスクが生じるかもしれません。ではどのような歯並びや噛み合わせだと矯正治療が必要なのでしょうか。

きれいな歯並び、良い噛み合わせとは?

歯列が整った口元は自然と笑顔に自信が漲り、相手にも好印象を与えます。そして整った歯並びと正しい噛み合わせは、見た目だけではなく歯やお口全体、そして体の健康維持にも深く関わるのです。

ではきれいな歯並びや噛み合わせとは、どのような状態を指すのでしょうか。鏡を見てチェックしてみて下さい。

・奥歯で噛んだ時、上下の前歯の中心が合っている

・上下の前歯が2~3mm重なっている

・上下の歯が1歯に対して2歯で噛み合っている

あなたの歯並びや噛み合わせは大丈夫でしょうか?

 

矯正治療が必要な歯並びや噛み合わせ

・ガタガタの歯並び(叢生)・・・永久歯が正しい歯列に並ばず、ガタガタに並んでおり歯と歯が重なっているような歯並び。見た目のコンプレックスだけでなく、歯磨きがしづらい歯並びのため、虫歯や歯周病リスクが高くなる

出っ歯(上顎前突)・・・前歯が突出しており、口を閉じても前歯が見えている状態。前から見た感じはきれいに歯が並んでいるように見えることもある。前歯だけが出ているケースと、上顎全体が突出している骨格の問題のケースがある

受け口(反対咬合、下顎前突)・・・下の前歯が上の前歯よりも出ており、横から見たら顎が突き出してしゃくれている状態

開咬(オープンバイト)・・・奥歯で噛んだ時、上下の前歯に隙間が生じる噛み合わせ。前歯で噛み切ることができず、奥歯に過度な負担がかかる

過蓋咬合・・・上下の噛み合わせが深い状態。噛んだ時に上の歯が下の歯をすっぽりと覆ってしまうため下顎が動かしにくく、顎の関節に負担がかかりやすい

上下顎前突・・・骨格的に上下の顎が前方へ突出している状態。前から見ると歯並びがきれいに揃っていても、横から見ると口元全体が前へ突出している

すきっ歯(空隙歯列)・・・歯と歯の間に隙間がある歯並び。見た目に問題がある他、空気が漏れて発音が不明瞭になりやすい

噛み合わせのズレによるバランスの悪さ・・・骨格が原因で噛んだ時に左右の噛み合わせがズレている。顔の中心と顎の中心がズレているため、見た目にも問題が生じる

このような歯並びや噛み合わせは見た目の問題だけでなく、歯の健康や顎の関節に影響が起こりやすいため、矯正治療が必要になります。

 

ご自身やお子さんの歯並びや噛み合わせに不安がある場合、また矯正治療が必要かどうか迷っている場合は、まずはかかりつけの歯科医師に相談してみて下さい。

 

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