矯正治療が終わり、矯正装置をお口の中から取り外したら、長かった矯正治療が終わった!と嬉しくなることでしょう。しかし矯正装置を外したからといって、そこで治療が終了するわけではありません。この後は「保定装置(ほていそうち)」という装置を付けて過ごす必要があります。ではこの「保定装置」はなぜ必要なのでしょうか。
なぜ保定装置が必要?
矯正治療が終了したばかりの歯は、実はまだ不安定な状態です。矯正装置によって力を加えて歯を動かし、歯並びを整えたあとは、歯と歯の間にある線維が元の状態に戻ろうとするため、そのままにしておくと歯が動いて後戻りが起きてしまいます。この後戻りを防止するための装置が「保定装置(リテーナー)」です。せっかく長い時間をかけて歯並びと噛み合わせを整えたのに、後戻りが起きてしまったら元も子もありません。きれいに並んだ歯並びと噛み合わせを保つため、そして後戻りを防止するために保定装置は欠かすことができないものです。
保定装置について
保定装置にはいくつか種類があります。取り外し式のものでは、表側にワイヤーがあり、裏側は樹脂素材からできているものや、透明のマウスピースタイプのものなどがあります。また固定式のものでは、歯の裏側にワイヤーを貼り付けるものがあります。保定装置は矯正装置と違い、歯を動かすことはありません。そのため保定装置を装着しても、基本的には歯が動く痛みはありません。
ただし、食事や歯磨きのあとに長時間保定装置を戻し忘れると、一時的に痛みが出ることがあるため忘れずにお口の中に戻すようにしましょう。
保定期間について
保定期間は約2~3年です。場合によっては3年よりもさらに長期間保定装置を使用することが望ましいこともあります。取り外し式の装置の場合、最初のうちは食事や歯磨きのとき以外は保定装置を装着したまま過ごします。矯正治療によって歯が並んだ位置に安定してきたら、少しずつ保定装置を外す時間を増やしていきます。ただし保定装置を外す時間はご自身で勝手に決めてはいけません。主治医の指示に従って装置を使用するようにしましょう。
特に最初の1年間はかなり後戻りしやすいため、しっかりと装置を使用することをお勧めします。
保定装置についての注意点
保定装置は長時間お口の中に装着するため、汚れや細菌が付いてしまいます。歯みがきの際に洗って、できるだけ清潔に保つようにして下さい。ドラッグストアなどでもリテーナー用の洗浄剤が販売されていますので、そちらを購入して使用するのも効果的です。なお消毒効果があるからといって、熱湯をかけることは絶対にしないでください。熱によって樹脂が変形し、使用できなくなってしまいます。
保定装置を破損・紛失した場合、すぐに受診するようにして下さい。長い時間保定装置が外れたまま過ごしていると、歯の後戻りが起きる恐れがあります。
保定装置は、きれいに整った歯並びを後戻りから守る大切な役割を持っています。きれいな歯並びをキープするために矯正治療が終わっても、もうしばらく頑張りましょう。
歯並びや噛み合わせを治すための矯正装置には、主に二つの装置があります。ブラケットにワイヤーを通して歯を動かす「マルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)」と、透明なマウスピースを交換しながら歯を動かす「マウスピース型矯正装置」です。いろいろな種類があるため、どんな矯正装置を使って治療をするのが良いのか迷うこともあるかと思います。今回は代表的な矯正装置であるマルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)とマウスピース型矯正装置の違いについてお話します。
ワイヤー矯正装置とマウスピース型矯正装置、それぞれの違いは?
・マルチブラケット装置(ワイヤー矯正装置)
歯の表面にブラケットという小さな装置を付け、そこへワイヤーを通して歯を少しずつ動かす、固定式装置を使った治療法です。矯正装置の中でも歴史が古く、最もオーソドックスな治療法です。メリットは、ほとんどの症例に対して効果が高いことです。難しい症例や、オープンバイトなどの不正咬合にも対応できる、オールマイティな治療法と言えます。
デメリットは、矯正装置が目立つことです。保険診療でも使用される標準的な装置はメタルブラケットという金属素材の装置で、お口を開けたときに装置がギラギラととても目立ちます。審美ブラケット(透明や白のブラケット)やホワイトワイヤー(表面が白い素材でコーティングされたワイヤー)を使うことで目立ちやすさは緩和できますが、メタルブラケットに比べると費用が高くなります。また固定式のため歯磨きがし辛く、汚れが残りやすいため虫歯や歯肉炎になりやすいというデメリットがあります。
マウスピース型矯正装置
インビザラインに代表されるマウスピース型矯正装置は、透明なマウスピースを交換しながら歯を少しずつ動かして歯並びや噛み合わせを整えます。マウスピース型矯正装置のメリットは、目立たずに矯正治療が進められることです。近くで見ても、マウスピースをはめていることがほとんどわかりません。また食事や歯磨きやしやすいことも、マウスピース型矯正装置の良いところです。
デメリットとしては、全ての症例に対応できないかもしれないことです。骨格的な問題がある場合や抜歯が必要な場合などの難しい症例では、ワイヤー矯正装置を選択したほうが良い結果が得られると予想されることもあります。また、装置を着けるのをさぼったり忘れたりすると治療が上手く進まなくなるため、ご自身での装置の使用状況が治療結果に強く影響します。
歯磨きはしやすいですが、マウスピースが唾液の循環を遮ってしまうため、食生活や歯磨きが不十分だと、かえって虫歯リスクが高まることもあります。
どの矯正装置を選ぶかは、歯科医師とよく相談を
ワイヤー矯正装置とマウスピース型矯正装置、どちらもメリットとデメリットがあることがおわかりいただけたでしょうか。どの矯正治療法を選択するかは、歯並びの状態や骨格などにより変わってくることがあります。最良の結果を得るためにも、どの矯正装置を使って治療をするか、歯科医師とよく相談することが大切です。
受け口(反対咬合)の治療法はいくつかあり、治療の開始時期によって使用する装置が違ってきます。今回は受け口を改善するための装置「ムーシールド」についてお話をいたします。
ムーシールドについて
まだお子さんが小さく、歯列が乳歯の時期に、既に受け口と診断された場合に使われるのが、ムーシールドと呼ばれる装置です。受け口は3歳児検診で見つかることが多く、そのまま成長するに伴って下顎が発達し、受け口が顕著になって治療も大変になってきます。そのため受け口と診断された場合は、早期に治療を開始することで症状が改善することがあります。
ムーシールドとは透明のマウスピースをのようなもので、夜寝るときに装着して受け口の改善を目指すための装置です。舌の位置が低く、下顎を舌で前方へ押し出してしまう癖があるお子さんや、既に反対咬合を気にして早期に治療を開始したいと希望されている場合などは、ムーシールドを使って治療を開始することがあります。
ムーシールドは歯並びを整えるというよりは、お子さんの顎の成長を利用して、正しい噛み合わせに誘導するといった目的で使われます。ムーシールドを装着することで得られる効果は、次のとおりです。
・早期に治療を開始することで、受け口の改善を目指す
・舌圧と口唇圧のバランスを保つ
・舌が下がることを抑制し、舌を高い位置に保つ
ムーシールドのメリットは、痛みが少なく、お子さんへの負担も少ないこと、3歳くらいから開始が可能なこと、取り外し式のため、食事や歯磨きに支障がないことが挙げられます。
ムーシールドのデメリットは、ムーシールドによる治療で受け口が改善した後にも、成長に伴って下あごが大きくなると再び受け口になる可能性があることです。
ムーシールドの装着時間について
ムーシールドは、主に就寝中に使用します。しかしできるだけ長い時間装着することで効果が得られやすくなるため、できれば起きているときにも装着すると良いでしょう。まだ小さいお子さんは、起きているときにムーシールドを付けることを嫌がるかもしれませんが、例えばテレビやDVDを見ている間などを利用すれば、意識がムーシールドから外れやすくなるでしょう。
ムーシールドの装着期間は3~8か月くらいが目安です。上下の噛み合わせが正しく改善したあとも、1年ほどは継続して装着することをお勧めします。
ただ受け口の治療は予見が難しく、ムーシールドでの治療法が一概に正しいとは言えないこともあります。しかし受け口をそのまま放置しておくとどんどん悪化するため、受け口と診断された、お子さんが受け口かもしれないと心配な方は、早期に歯科医院を受診してください。
お子さんの歯並びのお悩みのひとつに「受け口」がありあす。受け口は反対咬合とも呼ばれる、噛み合わせの異常です。受け口の治療法はいくつかありますが、その治療法のひとつに「チンキャップ」という装置を使った方法があります。今回は、チンキャップについて詳しくお話をいたします。
受け口の治療の必要性について
奥歯で噛んだときに、上の前歯が下の前歯を前後・上下的に2~3mmほど覆っているのが正常な状態です。しかしその状態が逆になっている場合、つまり下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態を「受け口」「反対咬合」などと言い、不正咬合の一種であるため治療が必要になります。受け口は遺伝要素も強く、そのほとんどが骨格が原因です。両親が受け口の場合、高い確率でお子さんも受け口になります。
横から見ると顎が出ているようにも見えるため、見た目に問題が生じます。また見た目だけでなく、受け口をそのままにしておくと噛み合わせのズレが大きくなり、咀嚼しにくい、発音しにくい、顎が痛くなるなど様々な悪影響が出てくる場合があります。そのためお子さんが受け口と診断された場合は、早期に治療を開始することが望ましいでしょう。
しかし、受け口の治療の難しさは、発育時期の下顎の成長にあります。一般的に身長が伸びる時期に伴って下顎の骨が前方へ成長します。目安としては、男の子が中~高校生、女の子では小学校高学年ごろと言われており、この時期までに下顎が成長して前方へ出てくるのを抑えるために、チンキャップを装着して治療をする場合があります。
チンキャップとは
チンキャップとは、下顎の成長を抑える装置で、まだ下顎の成長が残っていると判断される時期に使われます。この装置を装着することで、下顎の成長を前方から下方へと変える効果があると言われています。
チンキャップはヘッドキャップ、ゴムバンドそして顎に付けるチンキャップという構造になっています。ヘッドキャップからゴムバンドでチンキャップを引っ張り、下顎全体を後方に移動させることで下顎と上顎の位置関係を調整していきます。
しかし、全ての受け口に対して効果があるわけではありません。反対に、チンキャップを使用することで新たな骨格の問題を引き出してしまう可能性があるとも考えられています。その結果、外科手術を余儀なくされる場合もあり、チンキャップの使用については慎重な判断が必要となります。
いずれにしても、受け口をそのまま放置しておくと下顎がどんどん成長し、横から見ると顎がしゃくれたように見えてしまいます。審美性と機能性、そして体にとっても良いことはありません。受け口が気になるお子さんは、早めの歯科受診が必要です。
お子さんの歯並びのお悩みのひとつに、出っ歯に代表されるような、上顎の過度の成長が挙げられます。このような症例に対してワイヤー矯正やマウスピース矯正を行う場合もありますが、矯正装置はお口の中に装着するものばかりではありません。上顎の過度な成長に対して使用されるのが「ヘッドギア」と呼ばれるお口の外に装着する装置です。今回はヘッドギアについてお話をいたします。
ヘッドギアとは?
ヘッドギアとは、過度に成長した上顎の成長の抑制、上の奥歯の位置の調整、つまり出っ歯や上顎が前方に突出している症例の改善を目的とした矯正装置です。帽子のように頭に被ったり、首の後ろにかけて使用するため、見た目にはあまり良くはありません。主にお子さんの第一期治療で使用されますが、第二期治療のワイヤー矯正との併用や、大人の症例でも使用することがあります。
ヘッドギアは上顎の過剰な成長を抑制し、下顎とのバランスを整えることができます。また上顎歯列全体が前方に突出しているケースにおいて、上顎の奥歯を後方に下げて、歯並び全体を後方へ移動させて噛み合わせのバランスを整えます。
ヘッドギアの仕組み
ヘッドギアは、フェイスボウと呼ばれている金属の装置、上顎の大臼歯に固定する装置、頭に被るヘッドキャップ(または首の後ろにかけるネックバンド)で構成されています。ヘッドキャップを頭に被ることで頭部を固定源とし、モジュールというゴムを使って上顎に対してを後ろへ引っ張る力をかけて移動させます。
ヘッドギアを装着する際の注意点
ヘッドギアは見た目に特徴があり、学校など外出時に装着することはありません。しかし12時間以上装着することで効果が表れるため、家にいるときや就寝時は必ず装着するのが望ましいです。食事や歯磨き、お風呂に入るときなどは外しても構いませんが、できるだけ長い時間装着しないと効果が表れにくくなります。
ワイヤー矯正などと違い、頭部に装置を被る形状のため、ケガに注意してください。特にスポーツをするとき、兄弟ケンカが起きたときなどはケガをしやすい状況です。スポーツの前は外し、ケンカが起きそうなときは仲裁しながらヘッドギアを外してあげるよう注意してください。
ヘッドギアを装着すると、奥歯が痛くなることがありますが、歯の移動に伴う痛みなので心配はありません。
奥歯に固定しているバンドやフェイスボウが外れてしまうことがあります。このような場合は、早めに歯科医院に相談して下さい。
ヘッドギアは特殊な見た目ですが、正しく使用するとその効果はかなり高いものがあります。出っ歯や上顎歯列全体が前方へ突出しているのが気になる方は、ヘッドギアによる治療が可能かもしれません。
お子さんの歯並びのお悩みの一つに「受け口(反対咬合)」があります。受け口は上の顎より下の顎が前に出ていたり、前歯のかみ合わせが下の前歯が前に出て反対になっています。審美面だけでなく、お口の健康にも大きく影響する受け口の治療法のひとつに「上顎前方牽引装置」と呼ばれる装置があります。いったいどんな装置なのでしょうか。
上顎前方牽引装置とは?
受け口は専門用語で「下顎前突」と呼ばれる不正咬合です。下顎前突の原因は、下顎骨が大きい(前に出ている)場合と上顎骨が小さい(後ろに下がっている)場合の大きく2つに分かれます。「上顎前方牽引装置(フェイスマスク)」が適応となるのは、上顎骨が小さい(後ろに下がっている)場合です。この装置は、上顎の骨の前方へ引っ張り、前方への成長を促すことで、かみ合わせの改善をすることを目的とします。
上顎前方牽引装置は「口腔外装置固定源(フェイスマスク)」「上顎口腔内装置」「牽引用のゴム」の3つのパーツで構成されています。使い方は、口腔内にリンガルアーチなどの装置を装着し、口腔外にフェイスマスクを装着してエラスティックというゴムをかけ、上顎を牽引します。
見た目が特殊な装置のため、家にいるときと寝ている間だけフェイスマスクを着けて引っ張ります。学校へ行くときは使用しませんのでお子さんも気になりません。
上顎前方牽引装置はいつ使う?
上顎前方牽引装置は乳歯列期から思春期ごろにかけて使用します。この時期は上顎が発達する時期でもあるため、この時期に治療を行うことで改善を試みます。装着期間はおよそ1年から1年半ぐらいです。
上顎前方牽引装置の注意点
上顎前方牽引装置を使った治療を行うときの注意点は以下の通りです。正しい使用方法を守ることで治療の効果を最大限に発揮させることができます。
毎日頑張って装着することが、噛み合わせの改善に繋がります
上顎前方牽引装置は家に帰ってから装着するため、少し面倒と感じるかもしれません。しかし、受け口をそのままにしていると下顎がどんどん前方に突出し、見た目が本当に「しゃくれ」となってしまいます。受け口をきちんと改善するためには毎日の装着がとても大切です。毎日頑張って装置を付けて、理想のかみ合わせに改善していきましょう。
お子さんの歯並びを改善する矯正治療には固定式の装置と取り外し式の装置があり、中には固定式の装置でも、歯の裏側にワイヤーなどが通ることで外から装置が見えない矯正装置もあります。今回はそのうちのひとつ、リンガルアーチについてご説明します。
リンガルアーチとは?
リンガルとは「舌側」のことで、リンガルアーチは日本語で「舌側弧線装置」、舌側つまり歯の裏側に針金を通して歯並びを改善する方法です。まずはリンガルアーチの目的をご紹介します。
・歯を裏側から押し出す、あるいは引っ張るときの土台
・ブラケットや上顎前方牽引装置を使うときの固定源
・第一大臼歯(6歳臼歯)が動かないようにとめておく
リンガルアーチは大臼歯や乳歯のいちばん奥の臼歯部を土台にして使用します。歯の裏側に沿っている針金をリンガルアーチと言い、周りの人からはほとんど見えることはありません。リンガルアーチは全ての歯に少しずつ充てるように作られています。デコボコしている歯並びでもリンガルアーチを歯に添わせるよう固定します。歯に負担がかかりにくい矯正装置で、痛みはそれほど強くありません。
リンガルアーチは第一期治療、つまり歯が生え変わる時期や顎の骨の成長を促すための治療として使われます。治療期間はお子さんのお口の中の状態により異なります。
大臼歯にバンドという輪っか状のものをひっかけてセメントで固定するため、外すことはできません。食事や歯磨きも、リンガルアーチを装着したまま行います。ブラケットがついていないことと唾液循環が良いことから、比較的虫歯になりにくい装置ですが、お口の中の清掃はきちんと行わなければいけません。
リンガルアーチで気を付けるべき点とは?
・装置を装着すると違和感や異物感を感じます。しかし気になるからと言って指や舌で触ると装置が壊れる原因となったり、指や舌が傷つくことがあります。
・装置を付けたまま食事を行っていただきますが、ガムやキャラメルなど粘着性の強いものや固いものは装置の破損に繋がることがあります。これらの食べ物はできるだけ控えるようにして下さい。
・装置が入っていると歯磨きがし辛く、装置の周りに汚れが残りがちになります。とくに歯の裏側に針金が沿っている部分は、歯と歯茎の境目に汚れが残りやすく、不衛生な状態が続いてしまいます。
なおリンガルアーチを装着すると舌に装置が当たりしゃべりにくく、一時的に活舌が悪くなることもあります。しばらくすると慣れますが、最初のうちはどうしても話し辛さがあるかもしれません。
お子さんの矯正治療には様々な種類があり、全て同じ装置で治療するとは限りません。今回は「2×4(ツーバイフォー)」と呼ばれる矯正治療法をご紹介します。
2×4(ツーバイフォー)とはどんな装置?
一般的な矯正治療としてよく知られているのが、歯にブラケットを付けて歯を動かすワイヤー矯正でしょう。ワイヤー矯正は永久歯にブラケットを装着して治療しますが、この2×4は、乳歯と永久歯が混在している混合歯列期において使用される治療法です。
2×4では、乳歯と永久歯が混在している時期、つまり上下4本の前歯が永久歯になった時、乳歯以外の永久歯にブラケットを付けて歯を動かします。前歯を真っすぐに並べる、前歯の位置を調整することなどを目的としています。
2×4の装置は、前歯4本に着けたブラケット、奥歯に着けた金属製のバンドとチューブ、そしてワイヤーから作られています。固定式の装置なので、自分で取り外すことはできません。
2×4の注意点
正確に歯並びを整えることが可能な2×4ですが、いくつか注意すべき点があります。
・歯磨きがし辛くなる・・・通常の歯ブラシでは磨きにくい部分が出てくるので、装置が入り組んだ部分などは毛先が小さな山型になったワンタフトブラシで磨くようにします。また磨き残しが出ないよう、泡立つタイプの歯磨き剤は少なめに使用してください。
・ワイヤーが外れてしまう可能性がある・・・ブラケットにワイヤーを通して歯を動かしますが、2×4ではブラケットを付けるのが永久歯のみで、乳歯部分はブラケットがないためワイヤーが固定されません。そのためワイヤーが強い力を受けると、奥歯に固定してあるチューブという部分からワイヤーが抜けてしまうことがあります。もしワイヤーが抜けてしまったら、速やかに歯科医院を受診して下さい。
・食べ物に注意する・・・ブラケット装着後、しばらくすると歯が動く痛みが出てきます。この痛みは数日で治まるため心配はいりませんが、歯が痛い間は恐らく柔らかく食べやすいものを召し上がると思います。痛みが治まって何でも食べれるようになると、肉やおせんべいなど噛み応えのあるものを食べた際にブラケットが取れてしまうことがあります。この場合修理が必要ですので、固い食べ物などに十分注意してあげて下さい。
・装置が粘膜に当たって痛い・・・ブラケットやワイヤーをはじめとした装置が粘膜に当たり、痛みを感じることがあります。そのまま我慢すると傷になったり、口内炎になることがあるため、装置が当たって痛い場合、早めに歯科医院を受診するようにして下さい。
矯正治療は、患者さんの歯並びや年齢、顎の状況など総合的に判断して、その状態に応じた矯正装置を使って行われます。今回は「拡大装置」と呼ばれる矯正装置についてご紹介します。
「拡大装置」とは?
顎の骨の幅が狭いと、正しい位置に永久歯が並ばず歯並びがガタガタになってしまいます。また、上下の歯列の横幅のバランスが悪いと、噛み合わせのずれや顎の変形につながる場合があります。このような症例でよく用いられるのが「拡大装置」という矯正装置を使って歯列や顎の骨の幅を広げる治療法です。主に乳歯と永久歯が一緒に生えている「混合歯列期」で使われます。
・クワドヘリックス
クワドヘリックスとは、側方拡大装置とも呼ばれる装置の名称です。バネの力で歯列の幅を拡大したり、傾いた奥歯を改善するための装置で、成長期のお子さんによく使われます。
クワドヘリックスは、上顎の歯列弓の幅を左右に広げることを目的とした固定式装置で、弱い力をかけてゆっくりと幅を広げていきます。歯列弓とは歯並びのアーチのことで、この幅を横へ広げ、歯列が正しく並ぶようにします。固定用の金属製のバンドと太いワイヤーからできており、金属のバンドを奥歯に固定し、ワイヤーの形状を変えながら徐々に力を加えて歯列弓を押し広げます。なおこの方法は上顎の骨自体はほとんど広がりません。
また、下顎用の装置で似たような形のバイヘリックスという装置もあります。バイヘリックスは下顎の歯列弓の幅を左右に広げることを目的とした固定式装置で、骨自体の幅はほとんど広がりません。
歯磨きや食事で装置が外れることはありませんが、繊維質のものが絡みやすく、少々食事に不自由を感じることもありかもしれません。クワドヘリックスやバイヘリックスは簡単には外れませんが、もし外れてしまった場合は早めに装置を持って歯科医院を受診してください。
・急速拡大装置(RPE)・・・急速拡大装置とは、装置の中央にネジが付いており、そのネジを一日に2、3回回して装置を上顎の歯列を拡大するための固定式装置です。文字通り急速に歯列を拡大することを目的とした装置で、小臼歯と大臼歯にバンドを固定してネジを回します。拡大期間はおよそ1カ月で、その後クワドヘリックス・トランスパラタルアーチ・リンガルアーチなどに変更して引き続き歯列の改善を行います。
急速拡大装置のメリットは、固定式で確実に上顎が広くなること、広がるスピードが速いこと、そして拡大する量が大きいことが挙げられます。その反面、違和感が強く出ることがあります。また、急速に拡大するため、治療途中で前歯の中央に大きな隙間ができることも特徴です。
・床拡大装置・・・取り外し式の装置で、中央部にあるネジを1週間に一度、90度に回して装置を拡大し、歯列の拡大をはかります。こちらは上下どちらの顎にも使用可能です。
お子さんの歯並びの乱れや不正咬合は、お子さんの将来にとっても気がかりなことばかりです。今回ご紹介した治療法は、抜歯の必要がなくお子さんにとって負担が少ない治療法とも考えられます。お子さんの歯並びの乱れを改善するためには色々な方法があります。矯正治療は早ければ早いほど効果が出やすく負担も少なくなります。できるだけ早めに歯科医院で相談されることをお勧めします。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正など、矯正治療の種類に限らず矯正治療中に、小さな輪ゴムのようなものを使うときがあります。このゴムを「顎間ゴム」といい、矯正治療に欠かせないものです。ではこの顎間ゴムとはどのような働きや効果があるのかについてご紹介しましょう。
顎間ゴムとは?
顎間ゴムとは、「ゴムかけ」や「エラスティックゴム」などともよあれ、矯正治療の途中で使われます。この顎間ゴムは医療用のゴムで作られており、体にも害はありません。
顎間ゴムの目的は、ブラケットとワイヤー、マウスピースなどの矯正装置による歯の移動を補助するように、細かな噛み合わせの調整をすることです。矯正装置によって歯が動き、歯並びがきれいに並んでも、正しい噛み合わせはまだ整っていません。矯正治療の最終的なゴールは歯並びの改善だけでなく、噛み合わせを正しく整えることです。矯正装置にゴムをかけて上下の歯を動かして安定した噛み合わせに導きます。
ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも、矯正装置は上下別々に装着するため、上下の歯を一緒に動かすことはできません。顎間ゴムは上下の歯を同時に動かすことができる、唯一の装置です。矯正装置は矯正治療の途中で顎間ゴムを使うことは、正しい噛み合わせを整えるために欠かすことができません。
ゴムはどうやってかけるの?使い方は?その他顎間ゴムによる問題点など
顎間ゴムは、矯正装置についているフックにゴムをかけて使用します。顎間ゴムにはいくつかの種類があり、ご自身で取り付け・取り外しの必要があります。
その他ゴムを使うことでいくつか問題点が生じます。顎間ゴムによる問題点は次のようなことが挙げられます。
・自分で取り外ししなければいけない
・口が開きにくい
・食事時は外さなければいけない
・長期間使うことで痛みが生じることがある
顎間ゴムは動かしたい歯の強さによって異なります。次の受診までの分が渡されるので、毎日取り替えるのは面倒と感じるかもしれません。しかし顎間ゴムを使う治療は、正しい噛み合わせを導くためには欠かすことができない大切な治療です。面倒でも、必ず毎日取り替えるようにしましょう。
もしゴムを使うことで痛みが出る場合、ゴムの種類が合っていないことが考えられます。ゴムを装着してから痛みを強く感じるようになった場合、早めに担当医に相談して下さい。
顎間ゴムを使うことで、噛み合わせが正しく整えられる
顎間ゴムは面倒かもしれません。しかし、顎間ゴムをきちんと使うかそうでないかで矯正治療の仕上がりや治療期間に大きな差が出てしまうことがあります。顎間ゴムは歯にかけるお薬と考えて、担当医の指示通りに使うことが治療の近道になります。